京都にある晴明神社に行った時の事。
安部の晴明は今でこそ有名で、観光客も沢山居るらしいが、十年近く前のその頃は一般的にはあまり知られておらず、神社も全然人気が無かった。
私も友達に聞いて初めて存在を知った。
話の種に行ってみようという事になったんだけど、まだガイドブックにも場所が載っていなかったので、友達の記憶だけを頼りにバスに乗った。
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手前のバス停で降りたところ、周囲は京都らしくないビジネス街。神社なんてありそうもない。
この時点で『こんなところにあるのか? 記憶違いじゃないか』と疑ったんだけど、一本道ですぐ着くと言われたので取り敢えず歩いてみた。
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ところが行けども行けども神社は見つからない。
一条戻り橋に着いてしまい、ここまで行くと行き過ぎだという事で元来た道を戻った。
しかしやはり見つからず、今度はバス停に戻ってしまった。
「場所を間違えてるんじゃ?」と聞いても、確かにここだと友達は言う。
川と建物に挟まれた一本道の途中にあり、脇道にも入らないと。
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密かに疑いながら、また歩いてみた。ゆっくり、建物側を見回しながら。
でも見つからない。また戻り橋。また戻る。またバス停。
3、4回は往復したと思う。
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いい加減疑いも頂点に来て、歩きながら
「やっぱり間違えたんだよ。大体こんなところに神社があるなんて変だよ」
と言うと、
「あんたが疑ってるから見つからないんじゃないの」
と返された。
そこで『ああ、そういう事もあるかも』と思い、ちょっと反省して『そうかなあ』と思いながら何となく横を見た。
晴明神社の、門のまん前だった。
もう全身に冷水を浴びせられた気分。
とにかく「失礼な事を言ってごめんなさい」と門の前で謝り、お賽銭を弾んで更に謝り、友達にも謝り倒して、這う這うの体で逃げ帰った。
友達には「あんまり疑ってるから、からかわれたんだよ」と言われた。
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その後も何度か行ったけど、それからはスムーズに見つけられた。
敷地も広いし、壁の感じもビルとは全然違うし、ちゃんと道案内も出ていたし、二人がかりで探したし…。
普通に見ていれば見つからない訳がないんだけど、どうしてあの時迷ったのか不思議で仕方がない。
やっぱりからかわれたのかと思う。