不思議な体験や洒落にならない怖い話まとめ – ミステリー

8周目

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俺には、幼馴染の女の子がいた。家も近くて親同士の仲も良く、俺とその子も同い年ってこともあって小さい頃から一緒に遊んでた。

まあ、大体そういう関係ってのは、歳を取るにつれて男の側が気恥ずかしくなって疎遠になってくものだけど、例に漏れず俺もそうだった。

小学校の高学年ぐらいになると、道ですれ違っても

「よう」

「やあ」

ぐらいのあっさりした関係になってた。

そして、中学2年の夏休み。その子が突然、うちに来た。とうもろこし持って。

多分向こうの親にうちに届けるように頼まれたんだろう。俺はそう思ったし、向こうもそんな雰囲気だった。

あいにくその時、うちの親は外出してて、俺一人だった。とうもろこしもらってハイさよならってのもなんだかなー、と子供ながらに気を利かせて「あがってく?」と彼女を家に入れた。

麦茶を出して、まあ当り障りのない会話をした。担任がどうとか夏休みの宿題がおわんねーとか。だんだん打ち解けた雰囲気になってきた時、彼女が不意に「今度○○神社行かない?」と言い出した。

○○神社は、うちから自転車で10分ぐらいのところにあって、周りが木々で囲まれてて昼でも薄暗い、用がなければあんまり入りたくないところだった。当然俺は「え、なんで?」みたいな感じで聞き返した。

そしたら彼女は「あ、怖いんでしょ」と、ちょっと馬鹿にしたような顔で笑いながら俺を見てきた。

そうなると「そ、そんなことないやい!」的なノリになり、まぁ結果的に彼女の術中にはまってしまったわけで。

さすがに夜は怖いんで、なんとか理由つけて次の日の昼間行くことにした。

そして当日。現地集合ってことで俺が神社に着くと、彼女はもう着いてて俺を待ってた。真っ白いワンピースと真っ白い帽子。

普段絶対しない格好で、恨めしそうに石段に座ってた。

「おっそーーい」昨日とはうって変わってフレンドリーな第一声をもらいつつ、神社の前まで二人で歩く。

石段を登る途中、彼女は俺にいきなり「○○君は、霊って信じる?」と聞いてきた。

普段しないようなカッコで、人気のない神社に誘われ…。多少なりとも別のことを想像してた俺は、安心半分、がっかり半分(幼馴染とはいえ、目が大きくてちょっと釣り目で、猫みたいな感じのかわいい子だったからちょっとがっかり)ぐらいの気持ちで「信じるわけないじゃん(笑)」と即答。

「じゃあ、今日で信じるようになるかもよ?」ととんでもない事を言い出す彼女。

「私、霊とかそういうの、好きなんだ」おいおい電波ですか。

「会いやすいように、白ばっか着てきたんだ」そういうことですか。

唖然としながらとうとう神社に到着。快晴ならまだしも、ご丁寧に石段を登り出したあたりから曇り出し、嫌ーな暗さの神社一帯。

「じゃあ始めようか?」大きな目を更に大きく開いて、彼女が笑う。彼女が言うには、神社の周りを二人が取り囲むように走って回る。

二人の合流地点で、すれ違いざまに霊が見える、という噂があるらしく、実験の相手を探してたんだと。

「1周ぐらいだと見えるかどうか微妙らしいんだけど…」けど何ですか。

「8周回ると、二人とも連れて行かれちゃうんだって」勘弁してくれ。

とはいえ、男と女、幼馴染、同い年。断れない条件は揃っている。引いたら負けだという心理には勝てず、結局やることに。

神社の入り口を出発点に、互いに時計、反時計回り。ちょうど神社の裏に松の木が生えていて、そのへんが合流地点となる。

「行くよ! よおーい、どんっ!」なんでそんなに明るい。

内心半ベソ状態で走り出す。神社の脇を抜け、松の木へ。反対側から彼女が走ってくる。手を振ってるし、笑ってる。

周りには何も見えない。霊の姿なんてどこにもない。彼女とすれ違いざま、彼女の「全然見えない」という声だけが聞こえた。1周目はつつがなく終了。

そのまま2周目、3周目に突入。1周目で何も見えなかったこともあり、俺も心に余裕ができ、向かってくる彼女に手を振ったり「いねーじゃん! みえねーじゃん!」と笑いながら叫んだりしていた。

対照的に彼女は、2周目、3周目と数を重ねるごとに笑顔が消え、すれ違う時も無言になっていた。

『この分だと、8周したって全然OK』

そう思いながら迎えた7周目。彼女が俺とすれ違う瞬間、強烈なラリアットを俺にかました。

不意の急襲に喉をやられ、悶絶する俺。

彼女は苦しむ俺の手を強引に引っ張り「早く!」と神社から逃げるように走り出した。

訳も分からず一緒に走る俺。石段を下り終え、止めた自転車もそのままにして更に走る。

神社が見えなくなった辺りで、彼女はようやく足を止めた。

喉の痛みと走った後の息切れが治まり、ようやく彼女に文句を言った。

「何でラリアット?」

彼女が答える。

「見えてなかったの?」

は、何がですか?

「別に何も」

と答える俺。彼女は首を振りながら

「○○君の後ろ、2周目あたりから手とか顔とかが追いかけてきてたの。だんだん数が増えてって…7周目には○○君に絡みついてた。○○君がそんなだったから、8周目はやめとこうと思って」

「もし8周してたら…」と俺が呟くと同時に、俺の背後から小さく

「ちくしょう…」呻くような声がはっきり聞こえた。

その声を聞いたかどうだか、彼女は

「私はともかく、○○君はやばかったね。家帰ったら、背中みてみな?」と、笑った。

彼女に言われるまでもなく、帰った途端、母親に「あんた、どうしたのその背中?」

どうしたもこうしたも、シャツには手形がびっしり。その一件以来、彼女には色々と協力をさせられている。

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