少し不思議な話を親から聞きました。
自分の親は今から25年前、八丈島という所に転勤になったそうです。
そこの社宅(一軒家)の庭に、一本の夏みかんの木が植えてあったのですが、大家曰く、
「植えて十数年経つが一度も実をつけていない」
とのことでした。
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暫くして母が妊娠したところ、その木に数え切れない程の夏みかんが生っていました。
変な胸騒ぎがした母は、島で有名なシャーマン的な巫女さんに相談したところ、
「この夏みかんの木は神様の宿り木だから、祠を作って奉りなさい」
と言われました。
言われた通りにしたところ、一晩でその夏みかんが全て木から落ちていたそうです。
それで無事に俺を出産。
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妹を妊娠した時は、その木に実が二つしか生らず、巫女さんに相談すると、
「お腹の子は双子で、この木の神様が二人とも連れて行くと言っている」
と言う。
確かに双子だったらしい。
母は必死に助けてくれと頼んだ。
そうしたら巫女さんは、
「二人は無理です。一人だけなら、何とかなるかもしれない。それでも良いですか?」
と言うので、お願いした。
すると、二つの夏みかんのうち一つを取って来て、家に作り付けの神棚にお供えし、祈り始めたそうです。
祈りが終わると、巫女さんは
「何とか一人だけ助かりました。もう一人は残念ですが、神様に連れて行かれました」
と言いました。
それを聞いて、母は涙が止まらなかったそうです。
それから暫くして出産しましたが、双子の一人は死産でした。
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この話をする時、母は
「あの時、連れて行かれた子が不憫でならない」
と涙を流します。
妹が生まれてすぐ引越したので、その『夏みかんの木の神様』が良い神様なのか悪い神様なのか、未だ判らないそうです