これは父親から聞いた、自分が子供の頃に体験した話。
自分が3歳の時、四十度以上の高熱を出したらしい。
その時、深夜23時50分頃。
熱に魘されて布団に寝ていた俺が突然飛び起き、エアコンの方向を指差して、
「そこになんまいしゃんがいる」
と言い出したらしい。
ちなみに『なんまいしゃん』とは、子供の頃に自分が言っていた幼児言葉で
『ナンマイダ→ナンマイさん→なんまいしゃん』
と、仏様を表していたみたい。
両親は、
「どこに居るんだ?」
とその方向を見るが、何も見えない。
しかし自分はずっと、
「なんまいしゃん、なんまいしゃん、なんまいしゃん」
と、手を合わせて拝んでいたらしい。
※
それが治まって10分程経った頃、突然電話が鳴る。
こんな時間に何だと取ってみると、父親の姉からで、
「息子が釣りに行って帰ってこない」
と言う。
この時ばかりは両親はゾッとしたそうな。
すぐさま親父や親戚一同が海に行き、海上保安庁や消防団と共に探したが、従兄弟は見つからなかった。
結局3ヶ月後、自分の居る長崎から遙か離れた四国の方に遺体が揚がり、ポケットに入っていた免許証から身元が判明したらしい。
どうも海流の流れに乗ってそこまで行ったそうだ。
※
余談だが、どうももうすぐ亡くなる人には、魚は釣れないらしいね。
従兄弟と共に釣りをしていた人は沢山釣れたが、従兄弟は全然釣れなかったらしい。
結局その人は先に帰り、魚の釣れない従兄弟がそのまま残って、そんな悲劇になったのだが…。