これは5年前の話です。当時の私は浮浪者で、東京の中央公園での縄張り争いに敗れ、各地を転々とした後、近畿地方の山中の神社の廃墟に住むようになりました。
麓へ下り、何でも屋として里の人々の手伝いをして生計を立てていました。しかし、その生活で最も恐ろしかったのは人間そのものでした。いきなり猟銃を向けられたこともあり、大金を口止め料として渡されたことも。また、暴走族に追い回され、足を折られたこともありました。
そんな中で、一軒の農家の方に多大な恩を受けました。その方からは、作物を育てることを勧められ、苗や種を分けていただきました。荒れた境内に農園を作りましたが、ある時、廃墟探検者に除草剤を撒かれ、作物を全滅させられました。
生活を続ける中で、心が澄んできました。人間の悪徳と、優しい人々に憧れるようになりました。そうなると、幽霊を見ても怖くなくなります。
この神社には本当に幽霊が出ました。髪がぼさぼさで白着物に朱袴を着た女性の幽霊です。当初は恐れていましたが、慣れてくると彼女との付き合い方を学びました。静かに挨拶を交わし、社務所の修理を始めました。最初は怖がられましたが、徐々に彼女も穏やかな表情を見せるようになりました。
ある夜、暴走族に再び襲われ、死を覚悟しましたが、危険猟銃持ちのおじさんが駆けつけてくれました。彼も幽霊に脅かされていたそうです。
後日、神社の所有者である元神主の一族の方が訪れ、神社と麓の農地を私に譲ってくれました。私は今、東京で出稼ぎをしていますが、いつか神社を修繕し、再び神社として神主を迎えられるようにするために貯金をしています。