小さいころ、私は人と異なる一面を持っていました。
言葉や文字に対する理解は普通だったものの、人とのコミュニケーションに大きなギャップがありました。
目を合わせることはせず、話し始めれば一向に止まらない。
そして、どこか遠くの場所への瞬間移動のような出来事も何度も経験しました。
一度、母が遠くの公園に連れて行った際、ふとした瞬間に私は消え、家にいた父のところに帰っていました。
田舎の家、周囲の田んぼを見渡せる場所に住んでいたため、誰かが私を車で送ってきたとしても、それに気付くはずでした。
しかし、誰も私の姿を見ていませんでした。
近隣の住民からは、神隠しに遭遇するような存在として見られることもしばしば。
その中でも特に恐ろしい体験が一つありました。
ある夏の日、家の近くの松林で遊んでいた私は、小さな木造の家を見つけました。
家の前には、アサガオが咲くプランターがあり、黒いポールに巻きつけられていました。
そのポールに夢中になっていると、突如老婆の声が聞こえてきました。
彼女の顔は平らで、目が異様に大きかったのを覚えています。
目の形や表情は、深海魚を思わせるようなもので、その眼差しには凍りつきました。
彼女は私を家の中に招き入れ、変わったジュースを飲ませようとしました。
生臭く、生の小麦粉のような味がしたそのジュースを飲んだ後、私はその場から逃げ出しました。
家に戻る途中で鼻血が出始め、その中には小さな蛆が混じっていました。
恐怖と衝撃で近隣の家に駆け込み、救急車を呼んでもらいました。
入院し、その後の回復を経て、私の行動や性格は一変しました。
私の異常な行動はすべて消え去ったのです。
しかしその老婆の顔や、蛆が混じった鼻血の記憶は、今も私の中で消えることはありません。
あの松林には二度と近づかないよう心に決めました。何かを呼び起こすような感覚が、未だに消えませんから。