この話は私が小学2年生の時のことです。
クラスで仲の良かった友人が、興奮気味に「すごい場所があるんだよ!今日行こうぜ!」と誘ってきた。
その友人は普段から「宇宙人を見た」といった奇妙な話をする子だったので、あまり期待せずに彼に付いて行った。
行き着いたのは小山の頂上にある公園で、公園の入り口の反対側にある坂だった。
そこはよくダンボールで滑った場所で、下は大きな道路があった。
坂の一部では芝生が枯れ、地面が露出していた。友人はその部分を指差し、私は一人でその場所を調べてみたが、何も変わらなかった。
しばらく道路を眺めていたが、友人が肩を叩き、「もう帰ったほうがいいよ」と言ってきた。
気づくともう夕方になっていた。その日は土曜日で、学校から直接来ていたため、13時頃には到着していたはずだが、もう18時近かった。
友人に聞いても「なっ!不思議だろ!」と言うだけだった。
家に帰り、家族に話し、布団に入って寝ようとした時、ふと気づいた。
あの場所は完全に「無音」だったのだ。目の前の道路を走る車の音や、公園で遊ぶ子供たちの声が聞こえなかった。
時間の感覚もおかしくなり、日が傾くのにも気づかなかった。
翌日、友人はまた行こうと言ったが、私は怖くなり断った。
その夜、友人の母親から「息子が帰ってこないのですが、お宅にお邪魔してませんか?」と電話があった。
急いで私の両親と友人の家族でその場所に行くと、友人は一人で坂の上に座っていた。
両親に全てを話したが、信じてもらえなかった。
もし友人が私に教えずにその場所に行っていたらと思うと、今でも恐ろしい。
※
数年後、その場所は地元の子供たちの間で「時間が止まる坂」と呼ばれるようになった。
その坂には時折、現実とは異なる時間の流れが存在すると言われている。
私はその後、二度とその坂に近づくことはなかったが、その不思議な現象の真相を知る者は今も現れていない。