じいちゃんから聞いた話。
従軍中、幾つか怪談を聞いたそうだ。その中の一つの話で、真偽は不明。
※
大陸でのこと。
ある部隊が野営することになった。
宿営地から少し行った所に、古く小さな家が周辺の集落から外れてぽつんと建っている。廃屋らしい。
使えるようなら接収するかということで、数人が調べに行った。
家の中には什器や家具が一部残っていた。
だが、何故かその全てが真っ二つに割れ、半分しかなかったそうだ。
テーブル、椅子、水瓶、釜戸、戸棚、何もかもが半分。
おかしなことに、それらも家同様かなり古いもののように見えるのに、幾つかの品物の切断面は妙に真新しかったらしい。
調べに来た者たちがその異様な雰囲気に飲まれていると、一人が家の裏手から鶏の死骸を見つけて来た。
白骨化した、それも半分だった。
戻った彼らはそのことを報告し、結局その家は使わないことになった。
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夜、警戒のため何人かが宿営地の周辺を巡回した。
翌朝になって、最後に巡回に出た一人が戻っていないことが判った。
他の者の中に、夜中にあの家に明かりが点いていたと話す者が居て、すぐに捜索を行うことになった。
民間ゲリラかもしれないからだ。
時機を見て突入したが、家には誰も居らず、また火を使った形跡もなかった。
行方不明になった一人は、昨日鶏が見つかった家の裏手で死んでいた。
争った様子はなく、着衣や装備にも乱れはなかったが、部隊に戻されることなくその場で埋葬された。
遺体はひどく小さかったという。
その後間もなく、部隊は転進命令を受けてそこを離れた。
後になって、その辺りではあの家が『半分の家』と呼ばれて忌まれ、昼間でも近付く者は居ないという話を聞いたそうだ。