中学校に入学した時、入学祝いで祖母からアンティークドールを貰った。
古いドールだったけど、しっかり手入れされていて、汚いという印象は受けなかった。
それどころか、銀色の髪と白を基調としたゴシックドレスが特徴的なとても美人なドール。
「この子は○○(俺)の事がとても気に入ったみたいだから、大事にしなさい」
と祖母に言われたのと、とても高価そうなドールだったこと、何より俺自身が何故かそのドールを非常に気に入った事もあって、俺はそのドールの事をとても大切に扱ったんだ
※
それから一年ほど経ったある日、変な夢を見た。
夢の中に例のドールをそのまま15~18歳ぐらいにしたような見た目の少女が出て来て、俺に一回お辞儀をして去って行った。
俺は悲しくて何度も行かないでと叫ぶのだけど、その子はそのまま行ってしまう。
その子の姿が見えなくなった時、目が覚めた。時刻は朝の5時半ぐらい。
不安になってドールを飾っている棚の方を見たけれど、ドールに特に変わったところは無かった。
ただ、やはり夢の事が気になったので、二度寝はせずにいつも以上に丁寧にドールの手入れをして、箱に入れてから学校に出かけた。
※
その日一日は普通に学校で過ごし、その帰り道。
歩いているといきなり何かに背中を押され、前につんのめって転んでしまったんだ。
その直後に、さっきまで自分が居た所に木が倒れて来た。
前日に雨がかなり降っていたので、地面が柔くなっていたのだと思う。
『危なかった~』と思いながらもそのまま帰宅。
手を洗ってから箱の中のドールを取り出そうとしたのだけど、中のドールを見て固まってしまった。
壊れていた。それもかなり酷く。
訳が解らなくて、母親が帰って来たら取り敢えず母親に相談した。
母親から祖母に話が行き、祖母の知人の人形修復が出来る人に見てもらったのだけど、損傷が激しいのと古いドール故に、修復は無理だと言われた。
悲しくて泣く俺に、祖母は
「この子は○○の事が大好きだったからね。○○を守れてきっと安心しているよ」
と言って慰めてくれ、その後に祖母の勧めで土日の休みに人形供養寺にドールを持って行く事にした。
その時、住職も祖母と同じようなことを言っていた。
※
そして人形供養寺にドールを持って行って供養してもらった日の夜、また例の女の子の夢を見たんだ。
彼女は悲しむ俺を抱き締めて、何かを渡して来た。
それが何だったのかは判らない。渡された直後に目が覚めてしまったから。
ただ何となく、彼女は俺の守護霊になって今も守ってくれてるのかな、と思う。