五年前、幼稚園時代からの幼馴染だった親友のNが肺炎で死んでしまった。
そいつはよく冗談交じりに、
「死んだらお前の枕元に絶対に立ってやるからな」
と言っていた。
俺の方も、
「虚弱なお前よりも、無茶して事故死しそうな俺様の方が絶対に早死にするだろうから、こっちが先手取るだろうよ」
なんて言っていた。
※
そいつが死んでから二週間も経っていなかったと思うが、ショックから立ち直れず、他の友人達とも殆ど会わずにアパートに一人で居た。
夜になりロフトで寝ていると、小さな地震のような振動で目が覚めた。
俺はそういった振動で目を覚ますことが多かったので、また地震でも来たかなと思って、下にある電光表示の時計を見ようと顔をロフトから出した。
すると死んだNが腕組みして見上げている。
洒落っ気のない奴で、いつものワイシャツと茶色系のスラックス姿で、不敵な笑みを向けていた。
怖いとかびっくりなんてことよりも、生前に言っていた事を本当にやりやがったという気持ちの方が先に立ち、頭の中で『やられたっ!!』と思った。
そしたら、それをまるで見透かしたように、
「まっ、そういうことだ」
とはっきり言って、ロフト下の通路を玄関に向かって消えて行ってしまった。
遊びに行ったりしても、別れ際は「じゃっ」の一言だけで手も振らず振り返りもしない、あいつらしいプレーンな別れ方そのままだった。
あいつの姿が消えた後も、嬉しいやら先を越されたことが悔しいやらで、妙な気分で泣いてしまったよ。
あの野郎、今度墓参りに行ったら、柄杓で水をかけずにバケツで水をかけてやる(笑)。