半年前の出来事です。
現在住んでいるアパートは「出る」という噂のある物件で、私は恐怖を感じない0感体質のため、破格の家賃に惹かれて入居しました。
台所の壁には、逆さまに吊るされた人の形をした変わった染みがあり、私も気味悪く感じました。
この染みを隠すために、お気に入りのアーティストの大きなポスターを貼りました。
しかし、金曜日の深夜0時から1時頃になると、ポスターの左上が必ず剥がれるようになりました。
何をしても同じことが起こり、その時間帯にはラップ音や食器棚の引き出しが勝手に開き、食器が落ちる怪現象が起きるようになりました。
「見える」という友人に相談すると、「年配の男性の霊がいる」と言われました。
しかし、私はその怪現象に慣れ、金曜日の夜を楽しみにするようになりました。
半年前の金曜日、在宅で仕事をしていたとき、突然腰に激痛が走り、床に倒れ込んでしまいました。
動けないほどの痛みに襲われ、声も出せない状態でした。
しかし、外で救急車の音が聞こえ、玄関を開けて救急隊が駆け込んできました。
病院へ運ばれ、椎間板ヘルニアと診断されました。
救急隊員に話を聞くと、「年配の男性の声で119番通報があった」と言われました。
その日、私は鍵とチェーンを確実にかけていたのに、玄関は解錠されていました。
2ヶ月の入院後、部屋に戻ると、ポスターは剥がれていませんでした。
私はその壁の前に酒とおつまみを供え、「おっちゃん、ありがとう」と感謝の言葉を述べました。
その後、怪現象は完全になくなり、人の形の染みも薄くなり、ほぼ消えてしまいました。
おっちゃんが誰だったのかはわかりませんが、今も深く感謝しています。
※
後日、アパートの管理人から以前の住人について聞かされました。
その住人は年配の男性で、救急救命士だったそうです。
彼は人々を救うことに一生を捧げ、私の部屋で亡くなったとのこと。
私が体験した怪現象や、救急車が来た夜の出来事は、彼が最後まで人を救おうとした行動だったようです。
今も彼の優しさと勇気に感謝しつつ、安らかに眠っていることを願っています。