自分は子供の頃は凄く病弱で、しょっちゅう寝込んでいた。
幼稚園の頃に風邪を酷くこじらせた。
寝ている時に夢を見たのだけど、どこかの河原にぽつんと一人で立っている。
『何か暇だな、寒いな…』なんて思っていたら、どこからともなくガチャガチャ音が。
辺りを見回すと、甲冑を身に着けた人が三人、こちらに歩いて来ていた。
三人は自分の前にドカッとあぐらをかくと、
「○○(自分の事)、何をしておる?」
何と言っても幼稚園児の事、文脈が解らず『何をしている』→『最近は幼稚園で何をしている』と脳内変換。
その時、運動会で披露する予定だった踊りを披露した。元気いっぱい。
最初は露骨に戸惑った感じだった甲冑三人も、一曲踊り終わる頃には和んだらしく、
「他にも何か見せてもらえないか」
なんてリクエストをしてきた。
自分もテンションが高く、ありったけのレパートリーを踊った…。
夢の中だというのに妙にリアルで、石に足を取られて転んだりしつつ。
レパートリーが尽きかけた頃、それまでヤンヤヤンヤと手拍子していた三人がむっつりしていることに気付いた。
それに、三人で何事か話している。時々、気まずそうにこちらを見ながら。
『何となく妙な雰囲気だなあ…』と、踊りをやめてぼーっと三人を見ていると、どうやら話がまとまったらしく、
「○○、数は幾つまで数えられる?」
と聞いてきたので、元気いっぱい、
「ひゃく!!」
と答えておいた。
三人はうなずくと、
「では○○。またいずれ」
と順番に自分の頭を撫でて去って行った。
※
当時は『不思議な夢を見たなあ』くらいにしか思っていなかったけど、成長するにつれ何となく状況が理解できた気がする。
河原は賽の河原。
甲冑三人は恐らく御先祖(土着一族なので、戦に参加していた方もいる)。
不思議とはっきり覚えていた甲冑の家紋は、もう断絶した本家のものだったと大人になってから知った。
きっと、あの晩自分は死ぬ筈だった。
三人もそのつもりで迎えに来たけど、いたいけな園児のワンマンショーに、世代を超えた『祖父バカ』が発動…。
それで見逃してくれたのでは。
どんなに世代を超えていても、孫は可愛いものなんだな(笑)。