今から十年以上前、当時高校生だったおいら。
アメリカのバレンタインデーは、好意を持った相手に男女問わずプレゼントをするらしい。
その話を聞きかじり、
『よし!それなら』
と、当時好きだった女の子に告白すべく、少々高価なチョコを購入。
※
そして、バレンタインデー当日。
チョコを差し出し告白するも見事玉砕。
しかもチョコを受け取ってすらもらえなかった。
居た堪れなくなったおいらは学校をサボり、近所の公園で煙草を吸いながら落ち込んでいた。
※
暫く経つと、ふと背後に視線を感じた。
振り返るとそこには、
『おさげの黒髪にピンクのカチューシャ』
『白のブラウスとピンクのスカート』
という格好をした、小学低学年くらいの女の子が立っていた。
霊感の無いおいらだが、その時は
『あ!この子はこの世の住人じゃないんだな』
と直感した。
しかし特に怖いという気持ちも湧かなかったので、暫くその子を見つめていた。
すると、その子の視線がおいらの手元をずっと見つめているのに気が付いた。
おいらの手元には渡しそびれたチョコレート…。
これが欲しいのかなと思い、
「これ、本当は他の女の子にあげるつもりだったんだけど、その子にいらないって言われたんだ。
だから、その人のお下がりだけど…欲しい?」
そう声に出して聞いてみた。
そしたら女の子は、
『え!くれるの? 本当に?』
といった顔をしてからおいらに近付き、恐る恐る手を差し出す。
おいらがチョコを渡してあげると、満面の笑顔で
「ありがとう!」
と言って走り出し、その先に曲がり角もないのに、消えるように居なくなった。
まあ、こんなおいらのチョコでも喜んでくれる人(霊?)が居て良かったなと、落ち込んでいた気持ちが少し軽くなった。