あるカップルが車で夜の山道を走っていた。
しかし、しばらく走っていると道に迷ってしまった。
カーナビもない車なので運転席の男は慌てたが、そのとき助手席で寝ていたと思った助手席の彼女が、
「そこを右」
などと道を案内し始めたのだ。
「なんだ、道知ってるのかよ」
と思った彼だが、助手席から聞こえてくる彼女の案内に従って山道を走り始めた。
「そこを左」
「その道入って」
など彼女の案内は続いた。彼は安心して運転をすることができた。
そして、
「そこを左に曲がって」
彼はハンドルを切って左に曲がった。
「!!!」
彼は急ブレーキを踏んだ。
左に曲がったすぐ先は崖となっていた。落ちたら命はなかったろう。
「なんでこんな道を教えたんだ!」
彼は助手席の彼女に怒鳴った。
「死ねばよかったのに……」
寝ている彼女の口から低い男の声が聞こえた。