俺は当時リサイクル工場で働いていた。
仕事の内容は、ゴミを回収してきて、それを可燃・不燃・ビン・アルミ・スチール・ペットボトル・発砲スチロールと分別し、それぞれを出荷するというものだった。
ヘタレな俺は3年で辞めてしまった訳なんだけど、辞める2日前に怖い体験をした。
いつものようにゴミの入った袋を手で破いて、中身を確認してから機械の中に放り入れていた。
この機械っていうのは、中に刃の付いたスクリューがあって、それが回転して、さらにゴミ袋をズタズタに破いてくれる便利な機械なのね。
ただ、石や鉄を入れると刃が折れちゃうから、機械にブチ込む前に毎回中身を確認してる訳です。
偶にまだ使えるお宝っぽい物が入ってたりしてたから、ワクワクしながら袋を確認してた。
その日も大量のゴミ袋の中に一つだけ真っ黒な袋があったから、期待に胸を膨らませながら開けてみたんだ。
でも、その袋、何重にも黒いゴミ袋を重ねてるせいか破っても破っても中身に辿りつけなかった。
外から触ってもフワフワした感触しかなかったので、面倒だからそのまま機械の中に放り入れたんだけど、作業終了時刻前に突然機械がエラーになって稼働が停止した。
取り敢えずエラーを解除して、時間も遅かったので先にバイトを帰宅させた。
※
俺は前日仕分けたアルミを出荷しに行って、工場に帰ってきた頃には18:30で、外はもう真っ暗になってた。
上司も先に本社に戻っていて、工場内は俺1人だけ。物音や足音を立てるだけで凄い響くほどの静けさ。
エラーの原因を調べる為、機械の蓋を開け、懐中電灯を片手に中を調べてみた。
真っ暗な中、スクリューを懐中電灯で照らしてみると、なにやら黒い糸がスクリューの中心軸に絡みついていた。
この時は何が絡みついていたか分からなかったが、俺は無数に絡みつく何かを無性に素手で引き千切っていった。
時計を見ると時刻は既に20:30になっていたので、取り敢えず機械内部を水道水で洗浄して、機械が正常に稼働するか確認してみた。
いつも通り正常に動いていたので、しばらく稼働させて先に戸締まりをした。
ふとベルトコンベアーの方を見てみると、先程スクリューの軸に絡みついていた黒い糸が大量に流れてきていた。
自分の目を疑った。それは糸ではなく、人の髪の毛だった…。
絡みついた髪の毛を、時間を忘れ無性に素手でブチブチと引きちぎってた自分自身が怖くてたまらなかった。
急いで稼働を停止させ、電気を消し工場を後にした。
本社で上司に話してみたが「どうせ美容院とかの髪の毛だろ」と軽く流された。
次の日、工場の鍵を開けスクリューの機械の下を見てみると赤褐色の水溜まりができていた…。
スクリューの機械内部は錆れていて、水で流すと錆も混じって赤褐色の水が流れてくるが、俺にはどうしてもそれが血の混じった水に見えて仕方なかった。