友人が引っ越しをした。
引っ越し先は築10年の一戸建てで、そこそこの広さもある良い家だった。
だが、家賃が異常なまでに安い。周囲の物件の半分程度しかないのだ。
俺たちは、
「そんなに安いなんておかしい」
「絶対いわく付きだぜ」
「夜は幽霊に気をつけろ」
などと友人を茶化していた。
やがてそいつは、
「そんな事は絶対に無い。来てみればどんなに良い家かわかる」
と言い始めた。
そこで、数人でそいつの家に遊びに行くことになった。
その家に入ると、やはりどこかイヤな気配がした。
そいつはしきりに、
「どうだ、なにもないだろ。おまえらは僻んでいるだけなんだ」
などと言っていた。
※
1階を回った後、階段を登り2階を見て回った。
そこで、昔不動産関係の仕事をしていた家のことに詳しい男が首を傾げた。
「どうかしたか?」
と訊くと、
「1階と2階の広さが違う。2階にはもう一部屋あるはずだ」
と言う。
言われてみると、確かにおかしかった。
2階の廊下の先に、もう一部屋あるはずだった。
問題の廊下にみんなで行って、突き当たりの壁をよく見てみると、壁紙が周りより新しい事に気がついた。
そこで、壁紙を引き剥がしてみると、男の予想通りに扉があった。
なにがあるのかとドキドキしながら戸を開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない。
俺たちは友人の許可を得て扉を破ることにした。
数度の体当たりの後、扉は開かれた。
隠された部屋の中には、壁と床に青いクレヨンで文字が書かれていた。
見渡す限りに、
「おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして おとうさんだして…」
と…。