1999年の大晦日、深夜の出来事です。
私は煙草を買うため、少し離れたコンビニへ出かけました。
住んでいる地域は田舎で、昔の街道筋を思わせるような古めかしい木造建築の家が並んでいます。
普段この時間には人通りがないのですが、その夜は近所の寺や神社へ参拝に行く人々と数人すれ違いました。
コンビニで煙草と缶コーヒーを購入し、除夜の鐘を聞きながら帰路につきました。
再び街道筋に入った時、街灯がなく薄暗い中で何か白いものがひらひらと揺れているのを見ました。
最初は洗濯物かと思いましたが、近づくにつれ、真っ白い着物を着た女性が見えました。
彼女は手足を広げ、まるでヤモリのように家の2階の壁に貼り付いていました。
生きている人間のするようなことではありません。
私は相手に気づかれないようにするため、そのまま通り過ぎることにしました。
しかし、恐怖に駆られていたため、他の道から帰ることも思いつきませんでした。
通り過ぎる間、女性の方を盗み見しましたが、顔は見えず、着物は白装束のようでした。
角を曲がり、女性の視界から外れたとき、恐怖がこみ上げ、急いで家に帰りました。
その日に葬式があったわけでもなく、変な噂もない家だったため、女性が何者だったのかは不明です。
しかし、彼女の下を通り過ぎた時、「お前で終わりだ」という声が微かに聞こえました。
その家には子供がいないそうです。
※
後日、私は近所の人からその家の歴史について聞きました。
かつてその家では数々の不幸が重なり、家族が次々と亡くなっていったと言います。
特にその夜、私が見た2階の部屋には、過去に悲しい出来事が多く起こったそうです。
地元の人々の間では、その家は不吉な場所として忌み嫌われているとのこと。
私が聞いた「お前で終わりだ」という言葉の意味が何であったかは、今でも謎のままです。