
高校2年の夏休みのことだった。
霊の存在など信じないと豪語していた友人が、地元で“出る”と噂されていた廃屋に、ひと晩ひとりで泊まってみると言い出した。
その日の昼間、彼は下見に出かけ、あまりの荒れ果てた様子に、寝袋を持ち込むことを決めた。夜になり、私たちは彼をその廃屋の前まで見送り、晩ご飯を済ませた後に別れた。それが、彼を最後に見た瞬間だった。
翌朝、彼を迎えに行くと、寝袋は廃屋の中にそのまま残っていた。しかし、肝心の彼の姿が見えない。
一緒にいたもう一人の友達が、彼の携帯に電話をかけた。すると、呼び出し音の後に接続され、通話状態になった。ただ、いくら声をかけても返事はなかったそうだ。その代わり、電話の向こうからは、まるで暴風の中にいるかのような、ものすごい風の音だけが響いていた。
彼は実家にも戻っておらず、私たちはついに警察へ通報することにした。
警察には、電話が繋がったことも話した。しかし、警察が確認したところ、彼の携帯電話は寝袋の中に残されていたという。
私たちが電話をかけたのは、まさに寝袋のすぐそば、廃屋の中にいたときだった。
信じがたいことだった。あり得ないはずの状況だった。
そして、事態はそれだけで終わらなかった。
彼が行方不明になってからちょうど1年後、今度はそのとき電話をかけた友達が行方不明になった。
さらにその翌年——昨年のことだが、その場にいたもう一人の友達までもが姿を消した。
残されたのは、私ひとりだけとなった。
次は、私の番なのだろうか。
正直、何が起こるのか分からない。ただ、あの風の音だけは今でも耳に残っている。