これは父から聞いた実際に起こった事件の話です。
15年前、10歳だった私の地元は山形県のさらに田舎で、ご近所さんは親戚のような存在でした。
戸締りすらしないほどの穏やかな地域だったのです。
しかし、その平和な中で突然殺人事件が発生しました。
第一発見者は隣に住むおじさんで、早朝、沢でわさびを取っているときに被害者を見つけたそうです。
被害者は一人暮らしをしていた優しそうなおばあちゃんでした。
小学生だった私にとって、こんな身近で起きた殺人事件は信じられないほど怖いことでした。
町中が大騒ぎになり、警察が一軒ずつ聞き込みを行っていましたが、犯人は見つからないままでした。
大人たちは、外部から来た犯行だと噂しました。
しかし、3ヶ月後、犯人が捕まりました。それはなんと、聞き込みをしていた巡査さんでした。
巡査さんは借金の問題でおばあちゃんと口論になり、殺害してしまったというのです。
しかし、私は知っていました。聞き込みに来た巡査さんの顔が、おばあちゃんの怒った顔に重なって見えていたからです。
※
巡査さんは多額の借金を抱えていましたが、おばあちゃんだけが貸主ではありませんでした。
ギャンブル好きで、家のリフォーム代や親の葬儀代、田んぼの年貢など、様々な所から借りていたようです。
そのおばあちゃんは土地持ちで、地域の人々に無償で土地を貸していました。
しかし、事件当時は県外の業者にその土地を売却しようとしていました。
これにより困る人々が多かったと言われています。
葬式の後、その土地は地元の人々がそのまま使っており、永久賃借権のような書類があったということです。
これらの事実から、私は18歳で上京してから一度も実家に帰っていません。