うちの家は親父が製麺業を経営していて、親父は仕事上、朝の4時になると家を出て行く。
両親の部屋は1階、俺の部屋は2階にあった。
俺が中学生だった時のある日のこと。
朝、いきなり揺り起こされた。
まだ外は暗いのに誰だと思って見ると、知らない着物姿の女性だった。
全てが真っ白と言うより、半透明な女性。
「下に誰か来ている。下に誰か来ている」
と言いながら、俺を引っ張る。
俺はその女性に引っ張られるままに部屋を出て、階段を降りた。
女性は「誰か来ている!」と、必死な形相で両親の部屋を指差した。
ドアを開けると、母がベッドの上で男に首を絞められていた。
「うわあ~!」と叫び、そこら辺にあったものを投げつけたら、男はベランダから逃げて行った。
その後は警察を呼んだり、親父を呼び戻したり。
着物姿の女性は、いつの間にか居なくなっていた。
乱暴目的の変質者が、開いていたベランダの窓から侵入。母を襲おうとしたらしい。
「あんたが起きて来てくれて助かった」と母からは感謝されたが、俺はあの半透明の女性の霊に感謝した。