某県では次世代を背負って立つITエリートを育てようと、IT教育にたいそう力を入れている。それゆえ、この県の公立学校では、IT教育関連の設備投資に限っては、湯水のように予算を使うことができる。
数年前、この県のとある小学校で、ある試みが行われた。それがスーパーマルチメディアホームルームである。いわゆる特別教室としてのマルチメディア教室ではなく、ホームルームの生徒一人一人の机すべてに、液晶式のパソコン端末が組み込まれ、教員は黒板を一切使うことなく、画像、動画、音声など、あらゆるメディアを縦横に駆使して授業を行うことができるという、まさに夢のようなマルチメディア教室だった。
一説にはこの教室ひとつに、8000万円の予算が投じられたと言う。
教室は完成し、ITに長けた教員が特別に配置され、授業が開始された。このクラスの生徒は、理科の実験や家庭科の実習などの特別授業以外、ほとんどの授業をこの教室で受けた。県内外から多くの教育関係者が視察に駆けつけ、この小学校がまさに時代の最先端を走っていることを否が応でも見せつけた。
そして間もなく、ある事実が確認された。
それは、児童の目は一日6時間もの間、液晶画面を見つめつづけるだけの耐久力を持っていないと言う事実だった。
これは過去に本当にあった話です。