7歳の長男の話です。
長男は所謂『視える子』らしいのですが、彼から聞き出す話のことごとくが、一般的な霊感体験談からズレていて興味深いのです。
長い髪の女や不思議な子どもなどは一切見えない癖に、
「空中浮遊する目玉の親父まがいのもの」
「鬼火を引き連れて行進する骸骨」
「後ろ手に縛られてうなだれる鬼」
などは、思い出したように見てくれます。
お前は鬼太郎か。
私としては、ぶっちゃけ長男の作り話でも構わないのです。面白ければ。
これは親バカというものなんでしょうかね。
今回の話は、先日一緒にシャワーを浴びながら聞き出したものです。
お盆が近かったので、
「亡くなった父が帰って来るのは見えないもんかね」
と話を振ったら、
「おじーちゃんは見えないけど、一年くらい前に変なことあった。
おとーちゃんに話したっけ?
おばけじゃないけど変なの見たよ」
と語ってくれました。
以下、長男の語ったお話。
※
お母ちゃんと公園に行ったら、ぼくよりちょっと背が高いお兄ちゃんがいたんだけど、変だったの。
ぼくは背がちっちゃいから、その子もあんまり大きい子じゃなかったと思う。小学二年生くらいかなあ。
その横におじいさんが立ってた。ジャージみたいな黒い服を着た、ひげのおじいさん。
首がすごく曲がってたの。顔が胸の前に垂れ下がるくらい。
それで、お兄ちゃんと背の高さがまったく同じ。
ぴたっとくっついて立ってたから分かったんだけど、おんなじ背の高さだった。
うん、おばけじゃないよ。だってぼくが何回もちらちら見たのに、ずっとはっきり見えてたもん。話もしてたし。
そうだよ、お兄ちゃんに話しかけてたの。
えーっとね、たぶん怒られてた。おじいさんが怒ってたの。
でもお兄ちゃんは、おじいさんとちがう方を向いて、はははって笑ってた。
ぼくだけじゃないと思うよ、おじいさんに気付いてたのは。
みんなわざと見てなかっただけ。おじいさんを見ないように、ちがう方向を向いてたの。
ちがうよ、みんな知ってたもん。
だって、公園にいっぱいいっぱい人がいたのに、お兄ちゃんのまわりだけ人がいなかったもん。
みんな知ってたんだよ。
あのおじいさんは人間じゃないって。