可憐な女子高生だった頃の話です。
中学時代に親しかった友達が亡くなり、当時の担任の先生と一緒に告別式に出た帰りのことでした。
私は友達が亡くなったことがショックで、泣いたりぼーっとしたりしていました。
運転席の先生はしきりに助手席の私に手を伸ばして、肩を抱いたり膝に触ったりしていました。
最初は慰めてくれているのだなと思いましたが、
次第に触り方が執拗になってきて、太腿を撫でたり腋の下に手を入れてきたりしたのです。
ふと気付くと車は住宅地から離れ、人気のない休耕田の中を走っていました。
「なあ、お前ももう大人だよな? 実は先生、前からお前のことを…」
そのようなことを先生が言い始め、田んぼの中にぽつんと生えている竹林の影に車を停めました。
そして突然、私の手を握ってきました。
私はまだ先生の意図が判らず、先生が停めた竹林の中にお墓があることだけが気に掛かっていました。
「先生、ここお墓ですよ」
「えっ」
先生は少し驚いたように竹林を覗き込んで、ぎょっとしたような顔をしました。
「T山!?(亡くなった友達の苗字)」
そう短く叫んで、先生は慌ててエンジンを掛け直し、住宅街へ車を走らせました。
私には何も見えなかったけど、先生にはお墓の中に何かが見えたようです。
家に戻り冷静になってから、私は自分が危ない目に遭う寸前だったことに気付きました。
私は幽霊は信じていなかったのですが、この時ばかりは友達が助けてくれたのかな、と思いました。