小学3年生の頃、当時9歳だった私は、学校で虐めに遭っていました。
幼なじみの友達はいたのですが、一人で過ごす方が楽に感じてきていました。
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そんなある夏の日のことです。
公園のお気に入りの場所、大木の下で一人おやつを食べていると、学生服姿の男の人がやってきました。
学ランに学帽、黒の革靴に白手袋をはめていて、手には紙の箱を持っていました。
高校生のお兄さんと思ってぼんやり見つめていたら、その人は「隣、座っても良いかい?」と一言。
私は「どーぞー…」っと言って、ちょっとずれました。
お兄さんは紙箱から何かを取り出し食べ始めました。
それは紅白まんじゅうでした。
その後、そのお兄さんとは色々な話をしました。
お兄さんは頷いたり笑ったりして、私の話を聞いていました。
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すっかり日も暮れた頃、お兄さんが「もう、帰るね」と言いました。
私が「明日もここに来る?」と訊ねると、お兄さんは「分からないね…」と答えました。
「お友達になろうよ」と、私が握手するつもりでお兄さんの手袋に包まれた手を握ろうとしたら、
「だめだよ!!」と凄くきつい一喝。
当時の私は腹が立って、その場を立ち去りました。
次の日に同じ場所に行きましたが、お兄さんはついぞ現れませんでした。
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大人になってからふとこの事を思い出し、霊感の強い先輩に話したら、
「あんた、その人は優しい人だったんだね…。
もし、あんたがその手をつかんでいたら…連れて行かれる所だったよ。
そのお兄さんは、連れて行きそうな事を分かっていたから『だめだよ』と言ったんだよ」
とおっしゃいました。
どうやらそのお兄さんは、随分昔に亡くなっていたそうです。
格好良くて優しい学生さんでしたが、これが私の初恋だとは…。