小学校の修学旅行で泊まった旅館で体験した話。
風呂に入るため大浴場へ皆で移動している時、向こうから三人組のおばあちゃん達が歩いて来た。
その中の一人のおばあちゃんが俺と目を合わせると唐突に、
「あらぁ? うちの孫よろしくねぇ」
と言った。
俺も皆も意味が解らず完全に狼狽えてしまった。
おばあちゃんはにこにこして去って行った。
※
数年後、高校に入学した俺に仲の良い友達が出来た。そいつとはいつも一緒につるんでいた。
ある日、そいつの家に遊びに行くと、修学旅行の時のおばあちゃんが居た。
間違いなくあの時のおばあちゃんだった。
「あらぁ? 来たの。いらっしゃい」
あの日と同じにこにこした顔でそう言われた。
「ばあちゃん、じゃぁこいつなの?」
と、友達は驚いた顔をしてばあちゃんに言っていた。
後で聞くと、友達のおばあちゃんは何か色々分かる人らしく、数年前におばあちゃんが旅行に行った後、
「高校生になったらとっても長く付き合える子に会えるよ。ばあちゃん先に会って来た(笑)」
と、友達自身も言われていたらしい。
友達はいつもの事だとその時は「ふぅん」と流したけど、
「女だと思ってたし。楽しみにしてたのにお前かよ」
なんて言っていた。
それはこっちのセリフだ。
※
一番不思議なのは、俺に会った時、おばあちゃんは夫婦水入らずの旅行中だったらしく、それならおばあちゃんの両隣に居たおばあさん達は誰なのだろう。
友達のおばあちゃんはにこにこしながら、
「あらぁ? 見えちゃった?」
と言うだけだ。