都市部の朝のバスはいつも通り混雑していました。
毎日の通勤ルーチンの一部となっていたこの時間、私は特定の席を選ぶ習慣がありました。
なぜなら、運転手のすぐ後ろの席からの視界が好きだったからです。
その日も、運転手の背後にある席に座りました。
私の左前方には、明るい色のスカートをはいたお姉さんが立っており、彼女は前方を見つめていました。
彼女の後姿、そして周りの乗客たちの様子が一望できる位置でした。
しばらくは何も異変はなく、ただの通勤の一コマとして過ぎていく時間でしたが、次の停留所に近づいた時、不可解な出来事が起こりました。
私は、お姉さんの腰の辺りを触る『手』を目撃しました。
その手は、お姉さんのスカートをさわさわと動かしていました。
私は瞬時に考えました。「あれは痴漢の手だ!」
しかしその次に感じた驚きは、その『手』の主が見当たらないことでした。
周囲を見渡すと、お姉さんの近くに立っているような人は誰もおらず、しかも停留所に到着したため、多くの人がバスから降り始めていました。
そして、一番気になったのは、その『手』が私に気づいたのか、私の視線を感じ取ると急に引っ込められたことでした。
それはまるで、何者かが私にその行動を見られたくなかったかのように感じられました。
その後、私はその事を運転手に伝えましたが、彼も驚きの表情を浮かべ、特に異変はなかったと語りました。
この出来事は、その日の私の中で大きな謎として残りました。
何日か後、同じバスに乗ったとき、同じお姉さんに再び出会いました。
彼女にその日の出来事を尋ねると、彼女もまた同じ『手』を感じていたことを明かしました。
しかし、彼女もまたその『手』の主を確認することができませんでした。
話を聞いている間、私たちはお互いに恐怖を感じながらも、その不可解な出来事に対する興味を共有しました。
その後、私たちはそのバスの過去について調査することにしました。
調査の結果、そのバスのルートには昔、ある事件が起きていたことを知ることになりました。
それは、数年前にそのバスで痴漢事件が起こり、加害者がその後行方不明になったというものでした。
私とお姉さんは、その『手』がその事件に関連しているのではないかと考えました。
しかし、確固たる証拠は見当たらず、結局真相は不明のままでした。
今でも、そのバスに乗るたびに、私はその不可解な『手』の出現を思い出します。
そして、その事件の真相や、その『手』の主の正体について、私はいつか解明したいと思っています。