墓石に混ざって、お地蔵様のような、奇妙な仏様か道祖神のような石が奉られている墓地がある。
それは墓石の一種らしく、それも奉られてたり墓石扱いされていたりするのだが、かなり異様。
そんな奇妙な石が、山の斜面をくり抜いた場所に四体並んでいる。
ある老婆が教えてくれた。これは自分のご先祖様の墓で、こんな墓石はこの墓地に幾つもある、と。
そのお婆さんは幾つか語ってくれた。
※
「このお地蔵様は裏に英語がびっしり刻まれているんじゃ。
わしらの曾祖父様の頃からあって、どうして英語が刻まれているのかは判らん。英語の内容もさっぱりと解らん。
孫が言うには読める部分で『just a night』と書いてあるらしい。孫はろくに英語を勉強しなかったから、これしか解らん。
そして四つのうち、三つの背中にも英語の文章がびっしりと刻まれている。
もしかすると、これは三つの地蔵の文章を繋げて読むものかもしれないらしい。
だが、こんな地蔵がこの墓地には幾つもある。そして、その地蔵には必ず背中に英語がびっしりと刻まれているんじゃ。
英語が読める者が何人かいたが、誰も文章をまとめて読んだ者はおらん。途中で恐ろしくなって逃げたくなるらしい。
もうここらは人も少なくなった。これを知ってるもんは少なくなった…」
※
地蔵のような奇妙な墓石が置いてある墓地を見つけたら、試しに背中を見て回ってほしい。
見ようとしなくても、背中を触るだけでも分かる。指先で背中を舐めれば分かるからだ。
そして、近くに寺か神社を見つけたら、建物の下の部分を見て回ると良い。
ネズミや猫が入れないように板が嵌め込まれているが、一箇所だけ外れる場所がある。
それは村の若者ならみんな知っている。
その外れる板の裏には英語が書いてある。そして、その上に御札が一枚貼られている。
墓地に地蔵に似た不思議な石を見つけたら、試しに背中を見て欲しい。