中学生の時の話。
当時6歳だった弟と剣道の道場に通っていた時のこと。
道場の近くに大きな交差点があるんだけど、そこの横断歩道で信号が赤から青に変わるのを待っていた。
横断歩道の向こう側には、同じ道場の友達とその親が待っていた。
信号が青になった。
すると不思議なことに、ぱったりと一台の車も通らないような状態になってしまったんだよね。
そこは結構交通量の多い交差点なのに、深夜みたいな静けさ。
『すっげー、嵐の目だ!』と思いながら、弟の手を引いてテクテク歩いて行った。
自分の足音まで聞こえず、変な感じだった。
でも、向こうで待っている友達とその親がニコニコしているから、何故かそれで良いんだと思った。
そして、横断歩道の真ん中の中洲のようになっている所に差し掛かった途端、周りの音が突然復活した。
それだけではなく、信号がまだ赤だった。
一瞬前まで青だったはずだ。こんな大きな交差点で信号無視する度胸はない。
気付けば前も後ろも車がびゅんびゅん通っていた。
さーっと血の気が引き、信号が青になるまで中州のような所で待ってから渡った。
友達とその親は、私が横断歩道を渡っている間、
「何してるの!」
と怒鳴っていたらしい。
そんな声も聞こえなかった。
あの無音の時間は一体何だったんだろうと思うと怖い。