20年前のある夏の夜のことです。私たち兄弟が夏休みを利用して祖父母の家に泊まりに行っていたときの話です。我が家にはとても可愛がられていた猫が一匹いましたが、その日は夜遅くまで帰って来ませんでした。
両親は猫がそのうち戻るだろうと思い、就寝しました。しかし深夜、何かの気配を感じた母が目を覚ますと、猫が突然、枕元に現れていたそうです。母が「一緒に寝るかい?」と声をかけると、猫は「ニャー」と一声鳴いて、再び夜の闇へと消えて行きました。
その夜を境に猫は完全に姿を消し、夏も終わりに近づいたある日、家の物置の横に積まれていた木材の山の隙間で、猫が亡くなっているのを見つけました。まるで最後に家族にお別れを言いに来たかのようでした。
その出来事は家族の中で今でも語り継がれています。猫が最後に見せたその一瞬の行動は、家族にとってかけがえのない思い出となりました。