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巨頭オ ― 二度と訪れてはならない村

巨頭オ

ある日、男はふと、かつて訪れた小さな村のことを思い出した。

それは数年前、一人旅の途中で立ち寄った、小さな旅館のある村だった。

静かで穏やかで、そしてなによりも、心のこもったもてなしが印象的だった。

なぜか急に、その村にもう一度行ってみたくなった。

男は連休を利用して、一人で車を走らせた。

自分の記憶力には自信がある。

当時の道順もしっかりと覚えていたし、確かに、途中にはその村へと続く案内看板もあったはずだ。

やがて目的地に近づいた頃、「あれ?」と男は首をかしげた。

以前は「この先◯km」と書かれていたはずの看板が、別の文字になっていたのだ。

そこには、こう記されていた。

「巨頭オ」

まるで外国人が手慣れない筆致で殴り書きしたような、不自然な文字だった。

胸の奥に、嫌な予感が走った。

けれど、男は引き返さなかった。

そのまま車を進め、村の入口へと到着した。

かつての面影は、そこにはなかった。

村はすでに廃村と化し、家々の建物には雑草や蔦が絡みつき、自然に飲まれつつあった。

「おかしいな……こんなはずじゃなかった」

男はそう思いながらも、車を停め、外に出ようとした。

そのときだった。

20メートルほど先の、朽ちた廃屋の影から──

異様なものが、ぬうっと姿を現した。

それは明らかに人間だった。

だが、異常に頭が大きかった。

異形の存在は、両手をぴったりと足の側面に添え、ぎこちなくも整然と、頭をぐらぐらと左右に揺らしながら、こちらに向かってきた。

そして──

その後ろからも、同じ姿の者たちが、次々に現れた。

男は、凍りついた。

瞬間、恐怖が全身を駆け巡り、我に返ると同時にアクセルを踏み込んだ。

車をバックさせ、泥を跳ね上げながら、国道まで一気に走り抜けた。

逃げ帰ったあと、男は地図を開いて確認した。

かつて訪れたあの村と、今回行った場所は──地図上では確かに同じ場所だった

だが男は、もう二度と、あの道をたどろうとは思わなかった。

あのとき確かに見た、巨大な頭部の者たち。

あれは夢でも幻でもない。

そして今も男の記憶の片隅で、あの不気味な名前が、焼きついたまま離れないでいる。

「巨頭オ」──あれはいったい、何だったのか。

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