サイトアイコン 怖い話や不思議な体験、異世界に行った話まとめ – ミステリー

木彫りの仏様

古民家(フリー写真)

母方の祖母が倒れたという電話があり、家族で帰省した時の話です。

祖母は倒れた日の数日後、うちに遊びに来る予定でした(遠方に住んでいるため滅多に来ません)。

その遊びに来ることが決まってから、

「チケットは取れたの?」「どこそこに行きたい」

など、電話が週に1、2回のペースで掛かってきました。

普段はそんなに電話をしてこないので、よほど楽しみにしているのだなと思っていたのですが、今考えると、きっと虫の知らせだったのだろうと思います。

そして祖母が居る病院に到着した時には、脳死状態(脳溢血)でした。

親戚会議の結果、機械(呼吸器など)を外して自然に天国へ送ることに決まり、その間は交代で祖母の看病をしていました。

先に父は叔父(母の弟)と一緒に仮眠を取りに祖母の家に帰りました。

二人で寝ていると、父がふと起き出し、あぐらをかいたまま天井をじーと見たりと落ち着かない様子。

見かねて叔父が声を掛けると、

「タンスの中に閉まってある、○○(母の兄の名前)が小さい頃に川原で拾った仏様を持って行きたい」

と言い出したそうです。

叔父は、父が何か夢でも見ていたんだな、と思い寝かしつけました。

その時の父の顔は何だか薄気味悪かったそうです。

その日の深夜、母が寝ていると何か視線を感じ、目を覚ますと薄暗い部屋の中で父がぼーと立っていました。

母は驚いて、

「何してるの? 電気も点けないで」

と言うと、父が

「みんなを呼んでくれ」

と言いました。

母は、

「みんな寝ているから明日にして」

と言うのですが、全然聞きません。

仕方なく祖父(母の父)と叔父(母の兄と弟)を呼んで来ました。

みんなが揃うと、父が叔父(母の兄)に

「あの仏様は絶対持って行くから」

と言い出し、叔父が子供の頃に川原で拾って来た仏様について(木彫りでできていて大きさ15センチほど)とか、父が知っているはずのない昔話をするのです。

祖父と叔父(母の兄)は、

「どうせおばあさんから聞いたんだろ」

と相手にせずに、部屋に戻って行きました。

だけど父は普段から冗談を言わない人なのでおかしいと思い、母と叔父(母の弟)はその父が言っている仏様を探しました。

すると父の話通りに、普段使わない部屋にあるタンスから仏様が出て来たのです。

それを父に見せるとニッコリと笑い、自分の部屋へ戻って行きました。

お葬式の前日深夜、母はまた何か視線を感じて目を覚ますと、父が部屋の窓(廊下側)をじーと見ていました。

母はまた父の様子がおかしくなったと思い、黙って様子を窺っていると、いきなり父が

「あっち行け!お前らの来るとこじゃない!ここへ来るな!」

と怒鳴り始めました。

母は驚いて、

「お父さん、誰も居ないよ!どうしたの?」

と言っても、ずっと窓を見て怒鳴っていました。

その状態が30分ぐらい続いたそうです。

母が、

「一体誰がいるの!」

と聞くと、

「女が一人、男が二人覗いてるんだ」

と言い、今度は母に凄い剣幕で

「こんなことになったのは全てお前のせいだ」「一生苦しめてやる」

など、脅しに近いことを言い続けたそうです。

それが明け方まで続き、ふと父が

「あいつらが居なくなった。ここに居たくない」

と泣き出しました。

母は父が気が狂ったと感じて、早朝に父の実家へ連れて行きました。

すぐ祖母(父方)に事情を話し、お祓いをしてもらうと、父は安心したかのように一日中寝ていたそうです。

母の話では、そのお祓いをする前も奇妙な行動をしていたそうです。

部屋をぐるぐる回ったり、気が付くと後ろに立っていたり。

祖母(父方)も自分の息子ながら薄気味悪いし、別人のようだと言ってました。

私はそんな出来事があったことなど知らず(従姉の家に泊まっていたので)、お葬式に両親の姿が見えなかったから心配していました。母のお母さんのお葬式だし…。

そして、祖母の棺桶にはしっかり木彫りの仏様が入っていました。

叔父(母の弟)が、

「きっとおばあさんは、君のお父さんを通じて伝えたかったんだろうね」

と父の奇妙な行動を理解してくれていました。

後日、母に何故お葬式に出席しなかったのかを尋ねると、この話をしてくれました。

まさか身近にこんな怖い出来事があったなんて信じられませんでした。

父はあれ以来、様子がおかしくなることもなく、元気です。

本人はその仏様の話をしていた時や、誰かが覗いていたことはあまり覚えていないそうです。

ただ自分ではないのは分かっていて、とても恐ろしかったそうです。

その『仏様』の件は、多分祖母の霊が父に乗り移ったと思うんです。

昔話も父が知ってるはずのないことばかりだと母が言っていましたので。

だけど、窓から覗いていた人達については未だに謎です。

思い当たる点は、両親が寝ていた部屋は昔、老夫婦が住んでいた家でした。

祖母の家と老夫婦の家は隣同志で、その隙間に井戸があります。

井戸を壊さずに蓋を閉める要領で廊下を作りました。

だから隣の家に行く時はその廊下を通るか、玄関から入る形になっています。

その廊下から一番近い部屋が両親が寝ていた部屋です。

窓は廊下が見えるように作られてます。

私は勝手に井戸にまつわる人たちなのではないかと思うのですが、実際は何も判っていません。

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