これは大学の先輩が体験した実話。
その先輩は沖縄の人で、東京の大学の受験のため上京していた時のこと。
特に東京近郊に知り合いもいなかったので、都内のホテルに一人で宿泊していた。
受験するためなのになぜか2週間くらいの長期滞在だ。
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ある日、試験を終えて試験会場からホテルに戻ると、フロントの人に呼び止められた。
フロント「A様でらっしゃいますよね」
先輩「はい。そうですが…」
フロント「実はA様宛に他のお客様よりお預かりものがあります」
先輩「えっ? 誰ですか、それ?」
フロント「さあ…他の従業員が対応しましたので判りかねます」
先輩は状況が理解できなかった。
なぜなら、実家の親以外は彼がこのホテルに宿泊していることは知らないはずなのだから。
先輩「人違いではないですか?」
フロント「いいえ。お客様はA様ですよね? でしたら間違いございません。確かにA様宛にお預かりしたものでございます」
先輩「他のAという名前の人ではないでしょうか?」
フロント「いえ、当ホテルでは現在A様という名前のお客様はあなた様だけですので」
先輩は訳が解らなかったが、取り敢えず自分宛だという謎の預かり物であるB5サイズの茶封筒を受け取った。
※
部屋に戻り、先輩は中身を開ける前に実家に電話してみた。
しかし当然実家の親はそんなもの知らないと言う。
やっぱり人違いでは…先輩はもう一度フロントに言いに行こうとしたが思い留まった。
先輩のA(ここでは名前は伏せるが)という名字は大変珍しい名前。
その名前で確かに届いていたのだから、他の誰かと間違うはずもない。
ついに恐る恐るその封筒を開いてみる。
すると中からは一枚のレポート用紙が出てきた。
そこにはサインペンで手書きの地図のようなものが描かれいた。
現在居るホテルから三つ先の駅から道が伸びており、簡略に描かれた道を順に辿って行くと…。
ある道の傍らに斜線で記された場所があり、そこに矢印がしてあって、その横に「ココ」と小さく書いてある。
封筒をもう一度覗くと、中には何やら家の鍵らしきものが一緒に同封されている。
先輩はもう完全に訳が解らない。
同時に物凄く恐くなり、その封筒に中身を戻すと、無理矢理フロントに押し返した。
もちろん、その地図の場所に行ってみようなんて気にはとてもなれない。
幸いにも受験校は翌々日の一校を残すのみであった。
しかしそのことが頭から離れず、試験に全く集中できなかったそうだ。
先輩はその試験を終えると、当初は東京見物をするためもう何泊かする予定であったが、それらをキャンセルして逃げるように沖縄に帰った。
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実話だけにこれ以上のオチはありません。
でも、その先輩は今だにそのことは全くの謎であり、思い出しただけでも恐くなると言っています。