小学5年生の夏、集団旅行に行った帰りの事。
貸し切りの電車の中、友人と缶ジュースを飲みながら雑談していた。
私はスポーツ飲料を飲み干し、その缶を窓辺に置いて網棚の上から荷物を下ろした。その間十秒足らず。
ふと缶を見ると、プルタブが完全に閉じている。
誰か別の子の物で、手が付いていないのではと思って缶を振ってみた。
しかし缶は軽く、中からは少しだけ残った水分の音がぴちゃぴちゃと聞こえるだけだった。
あまりに不思議なので、友人達や引率の大学生に見せたものの、誰も謎を解明できなかった。
結局その缶は持って帰り親にも見せた。やはり謎だった。
※
中学生になるまで何年か取っておいたが、そろそろ捨てようと思い、最後にプルタブを開けてみようと思った。
「プシッ」と軽快な音がして缶は開いた。中はやはり空だった。
どういう力が作用して、飲み干した缶の蓋が閉まったんだろう。