この話を知っている方も多いかと思いますが、投稿します。
これは毎日新聞の記者さんが実際に聞き、掲載したお話です。
ある日の雨の降る夜、会社から家路を急いでいたAさんが、田んぼのあぜ道で何かを探している人に気付きました。
「どうしました?」
Aさんが問い掛けると、その男性は消え入りそうな声でこう言いました。
「長男に買って来た消防車のおもちゃが見つからないんです」
「そうですか…一緒に探してあげましょう」
と、Aさんも泥がつくのもイヤがらず一緒に探しました。
でも、どんなに探しても全然見つかりません。
二人で泥だらけになりながら、雨の中必死で探しました。
「無いですねぇ…」
と何気なく男性の横顔を見たAさんは、おかしな感覚を覚えました。
「…あれ? この人どこかで見たような…」
でも、その時はあまり気に留めませんでした。
「無いなぁ…困ったなぁ…」
そう言う男性を慰め、ほんのちょっと下を向いた時に、男性の気配が無くなりました。
「あれ?」
周りをいくら見渡しても男性の姿は見えません。
「おっかしいなぁ…」
不思議と怖さも無く、泥だらけの姿で家に帰りました。
※
その泥だらけの姿を見た母親から「どうしたの?」と尋ねられたAさんは、今あった事を母親に話しました。
見る見るうちに母親の顔色が変わって行きます。
「どうしたん?」
そう言うAさんの前に、母親は古いアルバムを持って来ました。
「その男の人って…この人かい?」
Aさんがアルバムを見ると、そこには幼いAさんを抱いたさっきの男性が写っていました。
「あ…」
Aさんは言葉を失いました。
母親は、Aさんがまだ小さかった頃に他界した父親の話をしてくれました。
おもちゃの消防車を買って帰る途中で、車に撥ねられ他界した事も…。
「あんたが一緒に探してくれて良かった」
と母親は号泣したそうです。