小学2年生の頃、学校から帰って来たら、飼っていた黒い金魚と赤い金魚が死んでいた。
家の中には誰も居らず、心おきなく号泣していたら、遠方に住んでいる叔父二人が突然うちにやって来た。
うちに来る事なんか、生まれてこのかた一度もない二人。
「仕事で県庁に来たんで寄ってみたら、なんね、あんた泣いてたのね?」
「泣いてないです」
「一人でお家に残されて、寂しくてえんえん泣いてたんじゃないね?」
「泣いてないもん」
「お父さんお母さんを大事にしてね」
そう言って叔父二人は帰って行ったのだけど、帰宅した両親にその話をしたら、母が田舎の叔父の一人の家に電話した。
そしたら驚いたことに、その日叔父は二人とも仕事でずっと町役場に籠っていたという。
幼い私が寂しくないよう、金魚が叔父たちの姿を借りて挨拶して旅立ったのかなと思った。