ある日の夕方の出来事。
僕が自分の部屋で本を読んでいると突然、窓を「バンバン!」と叩く音がした。
びっくりして振り返ると、友達のB君が興奮しながら窓を叩いていた。
「A君!開けて開けて!!」
僕が慌てて窓を開けると同時に、物凄い勢いでB君が話し出す。
「あのさ、ついさっきの話なんだけど!!」
「ちょ、ちょっとB君、その前にさ…」
「まあ、聞けって。さっき自転車乗ってたんだよ。河原を走ってて」
「…うん」
「暫く走ってて、何かおかしいなーと思って自転車降りたらさ…」
「どうしたの?」
「自転車のチェーンを掛けたままだったんだよ」
「え?」
「だから、チェーンが掛かっていて、タイヤが回らなかったの」
「…? それでどうやって走れるの?」
「解んないよ。その時までは走れたんだよ。でもさ、その後はだめだった」
「だめって?」
「チェーンが掛かってるって事に気付いたら、走れなくなっちゃった」
「そうなんだ…」
「無意識だから出来たのかなぁ…。あ、A君、さっき何か言いかけてなかった?」
「え!? …あ、うん…あのさ…」
「?」
「…ここ、5階なんだけど、B君どうやってそこに立ってるの?」
※
編注: 自転車のチェーンが掛かっている事に気付いた途端に走れなくなったB君が、5階の外に立っている事に気付いてしまった…。