サイトアイコン 怖い話や不思議な体験、異世界に行った話まとめ – ミステリー

連れて帰ったもの

夜道(フリー写真)

私が小学3年生の夏休みに体験した話。

私が住んでいた所は凄い田舎で、地域の子供会の恒例行事で七夕会があった。

七夕はもう過ぎているけど、要するに皆で集まって、クイズなどの出し物をしたり、カレーを作ったり…というお楽しみ会。

基本、参加者は子供で、小さな神社の社務所(普段は地域の集会所として使用)を使って良いことになっていた。

当番の保護者が数名、手伝ったり、火元を管理していた。

その年、うちの母親は子供会の当番に当たっていたので、同じく当番のTさん(私の同級生の男の子と2歳年下の男の子のお母さん)と一緒に、材料の買い出しや社務所の掃除の準備をしていた。

七夕会も無事終わったのが夜の21時頃だったと思う。

うちの地域は、小さな山を挟んで南側と北側で一括りで、社務所や大半の子供の家は北側にあり、私の家は南側。

北側の家の子たちは、皆自転車で来ていたのでそのまま帰り、南側の家の子は保護者が車で迎えに来ていた。

残ったのは私と母、Tさん。

Tさんの子供2人は家が北側で近いので先に帰ったが、私の家は南側で一人で帰ることができず、母を待っていた。

片付けも終わり、母、私、Tさんは社務所の戸締まりをして、さあ帰ろうということころで、

母「あっ、トイレの電気消してへんかも」

Tさん「じゃあ開けて見てこよか」

母「いや、私見てくるわ。Tさんもう先帰って〜」

Tさん「そんなん悪いわ〜」

という遣り取りを暫くして、結局、Tさんは先に自転車で帰って行った。

母は鍵を開けて社務所に入り、トイレの電気も確認(電気は消えていた)。もう一回鍵を掛けて、今度こそ帰ろうと私は母と車に乗り込んだ。

この時、多分22時ぐらいだったと思う。

「ウィィィィ、ウィィィィ、ウィィィィ…」

エンジンが掛からない。何度キーを回しても掛からない。

母「あれ〜? バッテリーあがったんかな〜」

私「え〜!?」

母「エンジン掛からへんわ〜。どうしよう」

社務所から家まで歩いて帰ったら30分は掛かる。

しかもド田舎の夜道なんて歩きたくない。

家に電話して父に迎えに来てもらうしかないけど、当時ケータイは持っていないし、普段無人の社務所には電話が無い。

となると、社務所の近所の家の電話を借りるしかない。

母が私に車を降りるように言い、私と母はそれぞれドアノブを引いた。

「ガチャッ」

ドアが開いた音がするのに、ドアが開かない。

半ドアになっているのかと思って、何度もノブをガチャガチャするけど開かない。

上手く言えないけど、それが何か不思議な感じで…。

ビクともしないと言うより、ちょっと外に押せるけどすぐ押し返されるみたいな…。

まるで外から誰かと押し合いをしているような、変な感じだった(その時はテンパっていて、窓を開けるという発想は無かった)。

外は真っ暗だし、私と母以外は誰も居ない。

子供の私はともかく、体格の良い母が全力でドアを押しているのに開かない。

もう私は怖くて怖くて半泣きで、母に

「何で開かへんのぉぉぉ!早く帰ろうやぁぁぁああ〜〜」

と喚いていて、母も

「ちょっと待ち!」

と言いながら結構焦っていたと思う。

今から思えば…だけど、いくら母と私がそれぞれドアと格闘していたからといって、あんなに車がユッサユッサ揺れるものなのかな?

ぜえぜえ言いながら、母が再度エンジンを掛け直したところ、何度か目でやっとエンジンが掛かった。

母「アンタ、ドアちゃんと閉め直しや!」

そう言われたが、閉め直そうにもやっぱりドアが開かないので、仕方無くそのまま帰ることになった。

社務所から家に帰るルートは二つで、時計回りで帰るか、反時計回りで帰るか。

反時計回りは、山沿いの細い道で、途中に墓地の横も通るし、昼間に地元の農家しか使わないため街灯も無い。

時計回りは、北側の家の多くの間を通りながら県道に出るので、やや遠回りではあるけど、街灯もあるし車も何台かは走っている。

もう私も母も反時計回りルートを使う気にならず、時計回りルートで帰り、途中で交差点にあるコンビニに寄った。

コンビニと言っても、○ーソンなどの大手ではなく、地元に数店舗しかない小売店。もちろん24時間営業ではなく、夜0時には閉まってしまう。

何故コンビニに寄ったのかよく解らない。

多分、明るい所、人の居る所で一息つきたかったのかな?

後で母に聞いても、母自身何となくだったみたい。

コンビニの駐車場に停車して、母がドアを恐る恐る押すと普通に開き、私側のドアも開いた。

もうその時の安堵感と言ったらなかった。

気付いたら私も母も汗ぐっしょりで、顔は真っ赤。

コンビニでアイスを買い、ようやく家に帰った。

ここまでが当日の話。

それからずっと気になっていることがある。

それは、帰りに寄ったコンビニがある交差点付近で、やたらと事故が起きるようになったこと。

その交差点は私の小学校や中学校に通う通学路で、ちゃんと信号も歩道もあったし、それまで事故らしい事故なんて無かった。

でもそれから、通学途中に警察車両が来ているのを何度も目撃するようになった。

何度も言うように、うちはド田舎だから、交差点の見通しも特に悪くないし交通量も多くない。

そもそも、うちの市内での交通事故自体が少ないのに、この交差点の事故が飛び抜けて多い。

事故の規模は小さな物損事故から重大な人身事故まで様々だけど、2〜3年に一度は死亡事故等の重大事故が起こる。

正直、うちの市の規模でこの頻度は変。

私が高校生の時も、1歳年下の男子生徒が亡くなった。

ちなみにそのコンビニにも車が突っ込んだ。

自販機前でたむろしてたヤンキー数人が大怪我したらしい。

偶然なのかもしれないけど、もう一つ気になっていることがある。

それは一足先に家に帰ったTさんに起こったこと。

Tさんの子供(私の2歳年下の弟の方)が、その年の冬の初めに亡くなった。

数日前から風邪気味だったらしいけど、その翌日の朝、Tさんが起こしに行ったら既に冷たくなっていたとか。

風邪をこじらせていたのに気付かなかった、とか色々言われていたけど、ハッキリした死因はよく判らない。

これだけでも十分不幸なのだけど、その後は特にTさんに関しては何も聞いていない。

それで、私、思うんだけど…。

あの日、社務所の所から、Tさんと私たち親子はナニカ連れて帰っちゃったんじゃないのかな、と。

Tさんは自転車で来ていて、お子さん一人を亡くした。

私たち親子が帰りに寄ったコンビニと周囲では、私の知る限り十人近く亡くなっている。

うちは…軽トラだった。もしかしたら、荷台にいっぱい乗っていた…?

エンジンが掛からずドアが開かなかったのは、乗り込むまで出発させたくなかったから?

ユッサユッサ揺れていたのは、乗り込んでいる最中だったから?

そして途中に寄ったコンビニで降ろしてしまったのだろうか。

もし真っ直ぐ家に帰っていたら…。

それを考えるとちょっと怖い。

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