俺のクラスメイトにSという奴が居る。
そいつがいきなり「お前、霊媒師とか詳しい?」と訊ねてきた。
「何だよ? 急に」と訝しがると、彼は神妙な面向きで話し始めた。
何でも彼は、この冬休み中に先輩に連れ出され『滝不動』に行って来たと言う。
『滝不動』というのは、俺たちの住む山形県ではかなり有名な心霊スポットで、次のような曰くがある。
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昔、孫を猫可愛がりしていたお婆さんが居た。
その日も孫をおぶって野良作業をしていたが、誤って持っていた鎌を孫の首に突き刺してしまい、死なせてしまった。
お婆さんは、大事な孫を殺してしまった罪悪感と悲しみから、その地元の霊場である『滝不動』で首を吊り、自らの命を絶ってしまった。
以来、その場を遊び半分で訪れた者には、その老婆の呪いが降り掛かるという。
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「そこで写真撮ったんだけど…」
Sは携帯を開いて、俺に画面を突き付けた。
「俺の頭の右上、バッチリ写ってるだろ?」
携帯画面に表示された写真。そこには、真っ暗闇の中にぼんやりと浮かんでいるS。
そして彼の言う頭部右上には、まるで『アカンベー』をするかのように舌をデロリと出している老婆の顔がバッチリと写っていた。
「この日以来、毎晩金縛りに合うし、急に心臓の辺りが痛くなるし。
この間なんか母ちゃんに、
『アンタ最近老けたんじゃない? 目尻の皺すごいよ? 変な薬やってんじゃないでしょうね?』
とか言われるし、おっかなくてしょうがねーんだよ」
彼は親御さんに今回の事を話しはしたが、あまり真剣に取り合ってくれなかったらしい。
俺はすっかり消沈したSを見て、何とかしてやりたいと思ったが、霊媒師になんて伝は無いし、どうしようもなかった。
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それから数日、Sは見る見るうちにやつれて行った。見ていて痛々しかった。
そしてとうとう、先週の学校の昼休みに、Sは胸を押えながら倒れてしまった。
Sは救急車に運ばれたが、医者には「どこにも異常は見当たらない」と言われたらしい。
それで漸く事態の大事に気付いたSの親御さんは、とあるお寺に彼を連れて行った。
Sはそのお寺のご住職に、こんな話を聞かされたと言う。
「年に5、6人、あんたみたいな人がここを訪れて来る。
あの場所はな、自分と折り合いのつかない嫁に当て付けるために、何の罪もない己の孫を殺した、恐ろしい外道の居る場所なんだぞ。
これに懲りたら、もう二度とあの場所に近付いてはいけない」
住職によると、これが『滝不動』の曰くの真相だという。
Sは来週も、除霊のためにそのお寺に行くそうだ。