小学校の時、用務員さんが急病で一度だけ代理の人が来た。
あまり長くは居なかったけど、まあ普通のおじさん。
ただ妙だったのは、すべての女子に「ヨリコちゃん」と話しかける。
「ああヨリコちゃん、気を付けてね、じゃあね」
「違うよー、あたしカナ」
「ヨリコちゃん、元気ないね」
「あたしはメグミ」
気になって周りの友達や兄弟に聞いたが、どの学年にもヨリコなんて女子は居なかった。
まあいいやと思い始めた頃、用務員さんがプールの掃除をしていた。
様子が変だった。プールの排水溝に顔をくっつけて何か喋っている。
そして風向きが変わった瞬間、おじさんが喋っていた言葉が聞こえた。
「ああ、ヨリコちゃんヨリコちゃん、代わりがいれば出られるよ。ヨリコちゃん」
俺は走って逃げた。
それから暫くして元の用務員さんが学校に戻り、その人は居なくなった。
その後の事は知らない。