家には痴呆になった祖母がいる。
父方の祖母だが、痴呆になる前も後も母とは仲が良く、まめに面倒を見ている。
これは年末の深夜の話。
祖母の部屋から、何やらぼそぼそと呟く声が聞こえてくる。
時々祖母の独り言もあるけど、中から聞こえてきたのは明らかに祖母の声じゃない。
独り言とも違い、一定のテンポで押し殺したようにぼそぼそと呟いている感じ。
俺と祖母の部屋は一階の隣同士。気味が悪かったので足音を立てないよう静かに忍び寄ると、部屋の襖が空いている。
心臓がバクバクする中、細心の注意を払い部屋を覗くと
「しね、しね、しね」
と、枕元で呟いている母がいた。
死ぬ程怖かった。