数年前、とある湖畔で朝釣りのためにキャンプをしていた時のこと。
夜中の焚き火中に、
「たすけてえええ!だれかあ!」
と女性の声が湖の方から聞こえて来て、そちらに目をやると女性が溺れていた。
びっくりしたと同時に、助けなきゃと思い立ち上がると、連れが
「お前、何する気だよ!」と引き留めた。
「助けなきゃ」と言い返したら、
「お前、ちょっと冷静になってよく見てみろ!ここから離れていて真っ暗なのに、何で顔がはっきり見えているんだよ!」と言う。
改めて見ると、水の中でばしゃばしゃ藻掻くこともやめ、じっとこちらを見ている。
足が立つ場所ではないし、暗闇のはずなのに、白く光っていて顔の造作まではっきり分かる。
焚き火は埋み火だったから、こちらの光が届く訳も無い。
ぞっとして、言うまでもなく即刻撤収。
そちらを見ないようにして撤収作業をしていたのだけど、その間もずっと視線を感じていた。