中学校の時、先生に聞いた話です。
幼い二人の姉妹が家で留守番をしていました。両親は夜にならないと帰って来ません。
暇を持て余していた姉は、家でかくれんぼをする事を思い付きました。
ジャンケンで負けた姉が鬼になり、妹は姉が数え始めると、一目散に姉の居る2階から1階へ降りて行きました。
そして押し入れに隠れました。
やがて2階から、
「数えたよ。今から見つけるからね」
と言う姉の声がし、1階に降りて来る足音が聞こえました。
恐らく妹が階段を降りる音を聞いていたのでしょう。
それから色々な所を開けては閉める音が聞こえて来ました。
妹は見つからない自信がありました。
押し入れの奥に隠れて小さくなっていれば、例え押し入れを開けられても、中をよく探さないと見つかりっこありません。
※
そして暫く時間が経ち、妹が暗い押し入れの中でウトウトし始めた時、
「あっ。みーつけた!」
と言う姉の声が聞こえました。
そんな馬鹿なことはありません。押し入れはまだ開けられていないのですから。
多分これは姉の作戦で、見つけたことを聞こえるように言えば、見つかったと思って顔を出す。
それを狙っているのだろうと妹は思いました。
そのままじっと押し入れの奥で隠れていると、外から姉の声が聞こえて来ました。
「見つけた。出て来なさい」「早く出て来なさい」
姉の声は最初は穏やかでしたが、妹を出そうと躍起になっているのか、段々と声が荒々しくなって来ました。
「早く出て来なさいよ」「いい加減にしないと怒るわよ」「早く出なさい!!」
そのうち壁を叩くような音も聞こえて来ました。
妹は姉が自分を見つけられずに怒り出したと思って怖くなり、仕方なく押し入れからこっそり出ることにしました。
姉は洋服のクローゼットの前で立っています。
そこで妹が見たものは、クローゼットの中から出ている『白く小さな手』を、必死になって引っ張っている姉の姿でした。
妹が叫び声を上げ、それに姉が気付くと、その小さな手はクローゼットの中に引っ込んだそうです。
※
夜に帰って来た両親に泣きながら話をしましたが、信じてもらえませんでした。
その後、二度とその小さな手を見ることはなかったそうです。