苦しんでいる霊達が居たら全部救ってやれば良いのに、と考えるのは、霊感の無い人間の思考であると実感した体験談。
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高校時代のある日、友人Aが相談をして来た。
夜道で霊らしきものを見てから、家で怪奇現象が多発している。どうしたら良いのか、というものだった。
そこで自分は、
『私にあなたを助ける力は無いのでお引き取りください』
と心で念じれば良い、と教えてやったんだ。
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それから2週間ほど経ち、Aの家に友人Bと遊びに行った。Bはありきたりな展開だが、霊感がある人間。
家に着いてインターホンを押すと、Aが出て来た。するとBがAを見るなり、
「何をしたぁ!!」
と叫ぶ訳よ。自分もAもびっくりしてさ。
それで、Aが
「やっぱ見えるの?」
とBに聞く訳だ。
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詳しく聞いてみると、夜に寝ていると『助けて』という幻聴が響いて来たらしい。
だから、アドバイス通りに『助けられません』と念じようとしたのだが、あまりに急だったため、うっかり『どうすれば良いの?』と聞いちゃったんだって。
そうしたら、
『想像すれば良い…助ける場面を…そしたら逝ける…』
と答えてくれたと言う。
どうせなら天国に行かせてやろうと思い、天国へ続く門みたいなものをイメージして開いてあげた。
そうしたら、確かにイメージの中に黒い影が入って来て、門の中に行く感じが見えたと…。
そして『ありがとう』と聴こえたらしい。
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話を聞き終えたBが、
「アホか!お前、無闇やたらに霊なんか助けてやるもんじゃねぇぞ!最近、体調に変化ねぇか?」
と聞くと、
「最近、電気みたいなピリピリが凄い。寝てる時も瞼の上にピリピリ来る。起きてる時もピリピリがしてる。
更に、何か服がひっついている感じがする。その度に手で払ったりしていて、落ち着きが無くなる」
と言った。
Bは、
「だろうな。お前が無闇に助けちまったもんだから、この人は助けてくれると思って、霊がガンガン大群で来てんぞ!
つーか、天国の門なんか勝手に開くな!
ピリピリは霊がウロチョロしているからで、ひっついている感じは瘴気が身体に付いているんだ。
今、この世にどれだけ霊が居ると思う? 変に情けなんかかけるとドドドッと押し寄せて来るぞ!
日本だけで数万だ、キリが無いんだよ」
「どうしよう、俺、どうしよう」
とパニくるAに、Bは
「結界を張って霊が近付けなくしてやる」
と言い、何やら儀式みたいなことを一時間ほどした後、
「張り終えた」
と言った。
その後、Aの家に怪奇現象が起きる事は無くなった。
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霊に対してイメージが通用するのだろうかと疑問に思ったけど、まあ『助けられません』という念の言葉が届くくらいだから、通じるのだろうと思っておく。