私が学生の時の話です。
同じゼミに気の合う友人が居ました。
本当に気が合う友人で、よく飲みに行ったりする仲でした。
ある日、何だか神妙な顔をして彼が話し掛けてきました。
「変なモノが撮れたんだ…」
彼曰く、先週の飲み会の時に撮った写真の中に、変なモノが写ったとの事。
早速見せてもらおうとお願いしましたが、彼は何故か躊躇し、なかなかその写真を見せてはくれません。
もちろん気にはなりましたが、彼の落ち込み様を見ていると、強く押し通す事は躊躇われました。
※
その三日後、彼は更に深刻な顔で落ち込んでいました。
目にクマまで作り、暫くの間安睡できていない事は一目瞭然でした。
きっとあの写真が原因だろう。
そう思った私は、その時に湧き上がる嫌な予感を押し込めるようにして、彼にあの写真を見せてくれるよう再度頼んでみました。
「…解った」
何かを決意した彼は、やっとその写真を見せる事を了承してくれました。
本当に見て良いのか?
自分でお願いをしておきながら、その写真を見る事への不安は纏わりついたままで、私は何だか気持ち悪くなっていました。
彼の家でそれを見せてもらう事を約束し、その場を後にしました。
※
その日の夜。彼のアパートを訪れました。
「ピンポーン」
何度チャイムを鳴らしても、彼は一向に出て来ません。部屋の電気は点いているのに。
『寝ているのか?』
そう思った私は、ドアノブに手を掛けました。
「カチャリ」
開いています。
狭い部屋なので、ドアを開け部屋を覗いた瞬間、不在か否か確認できます。
彼は家を開けたまま不在でした。
『いいよな、別に…』
と思いつつ、部屋に勝手に上がらせてもらい、彼の机の上にふと視線を向けました。
そこには灰皿があり、燃え滓が残っていました。
写真とネガの燃え滓です。
それを見た時、何故か解りませんが、押し潰されそうな物凄い不安に捕われた事を、今でも憶えています。
その燃え滓については、完全に燃え尽きてしまっていて、何が写っているのかまでは判別できませんでした。
そして次に、その机の下に一枚だけ写真が落ちている事に気付きました。
その写真には、異様なモノが映っていました。
彼の顔がねじ切られるように、グニャリとしたものになっているのです。
禍々しい。一言で言ってしまえば、心霊写真そのものです。
もうそこには一秒たりとも居られませんでした。
彼はその日を境に行方不明になりました。