私が着ぐるみショーのお仕事を始めて一年が過ぎようとしていた頃です。
アンパンマンのショーで、静岡県の『富士見ランド』という現場へ二泊三日で行くことになりました。
その時のメンバーは若手で組まれ、何故若い者ばかりなのだろうと不思議に思っていました。
しかし後から考えるに、既に『知っている』ベテランは皆、断わっていたのだと思います。
そこの現場は『出る』と社内では有名な現場で、霊感のある人は絶対行かない場所だそうです。
先輩に聞いた話では、まずステージの下手(お客さんから見て左側)にまず居るそうです。
夜中に一人で練習していた時に見たそうです。
あとはスタッフが宿泊する棟の洗濯室に凄いものが居るという話でした。
先輩の話では、洗濯機から洗濯物を取り出すと、髪の毛まみれになっていたことがあったそうです。
噂では『自殺した人が居る』など、そのような話でした。
しかし霊感の無い私でさえ、そのスタッフが泊まる宿舎に一歩足を踏み入れると悪寒がしたものです。
まあ、山の上にあるので、単に空調設備の不良だったのかもしれませんが。
とにかく独りで夜中に歩くことは出来ませんでした。
ただ、何かを『見た』という話は聞くものの、何かされたという話は聞かなかったのを憶えています。
あと一つ、そこへ行く時に通る裏道には墓地がありました。
そこを通った時、運転していた方が「今、ブレーキが効かなかったよ!」と言ったそうです。
そんな富士見ランドも1994年に閉鎖され、取り壊されてしまいました。
結構好きな現場だったのですけれど。初めて主役のアンパンマンを演じた所ですし。
とにかく着ぐるみのお仕事をしていると色々な所へ行きますので、どこそこの現場は『出る』という話は頻繁に聞きます。