これは僕の姉が、今の旦那と同棲中に体験した話です。
姉は何年か前に、京都の市内にあるマンションに旦那さんと住んでいました。
当時旦那さんは朝早い仕事をしており、毎朝5時には家を出ていました。
姉はいつものように慌ただしく旦那に弁当を作り、朝飯を食べさせ旦那を送り出しました。
姉自身も朝から仕事があるので、出勤時間の8時まで仮眠を取るのが日課だったそうです。
※
テレビを点けたまま、鼻の辺りまで布団を被りウトウトしていると、視界に左右に揺れる何かが目に入ったそうです。
普段から霊感があった姉は、直感的に『ヤバイ』と感じたそうです。
その嫌な予感を感じた瞬間、金縛りに遭ってしまったそうです。
『きよったか…』
姉は心の中で呟きました。
恐怖と言うよりも、面倒くさい感情が先に立った姉は、
『さっさと正体を見せて帰れ』
という気持ちで、少し恐怖心もありましたが、その左右に揺れる何かを見たそうです。
姉が見たそれは、短パンに白いランニング、坊主頭で肌は土色(紫がかっていたと強調していました)の12、3歳の少年が、正座で首を左右に揺らしながら、テレビを不思議そうに見ていました。
第二次世界対戦などの資料でよく見るような子だったそうです。
普段は霊感があった姉でも、カーテンの隙間の日光に照らされた霊を見るのは初めてだったらしく、カタカタ震えながらそれが消えるのを待っていたそうです。
『消えてや。お願い』
そう心で念じた瞬間、その少年が左右に揺らしていた首を姉の方に向け、ゆっくり正座しながらズリズリと姉の布団に近付いて来ました。
『ちょっと…勘弁して』
と思った姉は目を瞑ろうとしましたが、何故か目が瞑れなかったそうです。
ついにその少年は姉が寝ている布団の横まで来て、掛け布団を引っ張って来ました。
姉は心の中で何度もお経を唱えたそうですが、掛け布団を引っ張る手は止まらず、ついには、
「なぁなぁ、なぁなぁ」
と少年は喋りかけてきました。
『うるさい。黙れや』
と声に出そうとしましたが、喉がカラカラになり声が出ません。
「なぁなぁ、なあって」
少年の声は段々と強さを増し、部屋の中に響き渡る程になり、姉は何とか目を瞑りカタカタ震えて居ました。
目を瞑ってしまうと、更に少年の声が大きくなり、耳の横にスピーカーでもあるのではないかと思う程大きな声になりました。
『早く帰ってくれ!アタシには何も出来ひんから!!他を当たってくれ』
姉がそう心で叫んだ瞬間、急に少年の声は止みました。
『やっと、帰ってくれた』
そう心を撫でおろし、姉は目を開けた瞬間、見てしまいました。
自分の体の横に添い寝するような形で、少年が寝そべっていました。
不思議な事に姉はこの時、恐怖と言うより少年に対する怒りが先立ってしまい、
「なんやコラ!!何が言いたいねん!!ワレ」
と、事もあろうに幽霊に怒鳴ってしまったそうです。
すると、
「あれ何なん?」
と、テレビの方に向かって少年が指を指したそうです。
姉がテレビの方に目をやると、全身緑の前歯が出た珍獣と、全身を赤い毛で覆われ、目が飛び出た怪獣のような生き物が目に入ったそうです。
姉が少年の方をもう一度振り向くと、もう少年は消えていたそうです。
※
姉は笑いながら話してくれました。
今でも、全身緑の前歯が出た珍獣と、全身を赤い毛で覆われた目が飛び出た生物をテレビで見掛けると、恐ろしくなりチャンネルを変えてしまいます。