友人が参加していたネットゲームのギルドには、多彩なプレイヤーがいた。その中でも特に際立っていたのがAさんだ。彼は対人戦に驚異的な強さを見せ、時折奇妙な言動で他のメンバーを驚かせていた。普段は何の変哲もない彼だが、彼の行動には常に何か予測不能な空気が漂っていた。
ある日、ギルドのメンバーが集まってチャットをしているとき、Aさんはログインするなり「Bさん、おめでとう!」と発言した。Bさん自身、何のことかわからず戸惑いを隠せなかった。Aさんはそれを軽く流し、話を切り替えた。
その夜、Bさんが友人に連絡してきた。彼はその日、昇進が決まったばかりで、まだ誰にも話していなかった。それなのに、どうしてAさんが祝福の言葉を知っていたのか、不思議でならなかった。BさんはAさんが何者か、もしかしたらストーカーではないかと心配していたが、証拠は何もない。
友人はこの状況をギルドマスターに報告し、Aさんに直接問いただすことにした。その際、友人は直球で「Aさん、あなたは超能力者ですか?」と問いかけた。Aさんは「たぶんそうだね。でも自分の能力はコントロールできないんだ。親しくなった人のことが、時々わかるんだよ」と答えた。
Aさんによると、現実で相手が何を見ているのか、考えていることがネットゲームでは相手のキャラクターの姿として現れることがあるという。対人戦でも相手の次の動きが何となく読めることがあったそうだ。
結局、Aさんはゲームから引退を決意。友人たちとの最後の日には、感謝の気持ちを伝え、Bさんには自分の能力について打ち明けた。そして不思議な言葉を残してログオフした。「あなたの部屋の机、右の上から二段目の引き出しをよく探してみて。」友人がその場所を探すと、行方不明になっていた重要なレポートが見つかった。
BさんとAさんはその後も連絡を取り合い、友情を深めていった。Aさんの突然の告白によって、ギルドの雰囲気は一時的に変わってしまったが、彼の去った後は徐々に元の温かい雰囲気に戻りつつあった。