自分が子供の頃の話。
両親の付き合いで誰か(多分二人の共通の知り合いか何かだと思う)のお見舞いに行ったんだ。
何故か病室には入れてもらえず、その階の待合室で弟と絵本を読みながら待っていた。
自分は子供の頃に身体が弱くてよく入院していたから、時間を潰すのはさほど苦痛なことではなかったが、一つ下の弟はどうしても暇を持て余していた。
『うぜー』と思いながら相手していたんだけど騒げば怒られるし、『どうしようかなー』と思っていたら、様子を見に来た親が「売店で買い物をしてきていいよ」とお金をくれた。
お菓子を与えておけば弟が静かにしているだろうと思ったらしい(笑)。
正直病院の中を歩き回るのは好きじゃなかったんだけど、当時幼稚園ぐらいだった弟を一人行かせる訳にもいかず、仕方なく一緒に売店に行くことにした。
大人ばかりの病棟ってかなり怖かった記憶がある。よく入院していた病院の小児病棟は、子供が怖がるため他の病棟の人は立ち入り禁止になっていたから、余計に怖かった。
※
俺は弟と地下にある売店までエレベーターに乗って行った。
お菓子を買ってご機嫌な弟の手を引っ張って病棟に帰ろうと思ったんだけど、道を間違えたのか乗ったエレベーターがどうしても見つからない。
人に聞こうにも人が通らない。仕方がないので売店に戻ろうしたら、ようやくエレベーター発見。
意気揚々と乗るものの、何故か今居る階よりも下に行くボタンしか無い。今思えば、職員専用とかで一般の人が使うものではなかったのかもしれないけど、それに気付くはずもなく。
好奇心から一番下に行ってしまった。ドアが開くとそこは真っ暗。怖くなって下から二番目に行くと薄暗く、白い服みたいなものを着た人が沢山居た。本気でビビった。
一人が自分達に気付き、優しい感じで「ここにはきちゃ駄目だよ」みたいなことを言ってきたので、泣きそうになりながら「改造しないで」と謝ったはず。
どことなく当時夢中になっていた特撮の悪役とダブって、『ここに居たら改造されてしまう!』と思ったんだろうな。
その人は笑いながら「しないしない。けどいつまでもいたら改造しちゃうかも」らしきことを言って弟大泣き。自分も本気で泣きそうだった。
悪いことをしたのかと思ったのか、その人は売店があった場所まで送ってくれて、病室の階に行けるエレベーターまで送ってくれた。
その時点でエレベーターにトラウマが出来てたんだけどさ(笑)。
※
それでエレベーター乗ったものの、上の階に行くボタンに二人とも手が届かない。他の人も乗っていない。
確か元居た病棟は七階とか八階とかそこら辺で、どんなに頑張っても届かない。
仕方なく自分を踏み台に弟が、手が届くところまでボタンを押した。人が乗り込んで来たら押してもらおうとか、途中から階段で行こうなどと考えていた。
運良く途中の階で足にギブスをしたお兄さんが乗って来た。
すると「○階を押してあげて下さい」という声がした。
お兄さんは自分達を見て「いいですよー」と言ってボタンを押してくれたんだ。
でもさ、エレベーターには自分と弟しか乗っていなかったんだよ。
『あれー?』と思って後ろを向いても誰も居ない。でもお兄さんは何も気にしておらず、『もしかして自分が言ったのかな』と思った。
お兄さんが何か話し掛けてきて、それに答えている内に病棟に着いた。
お兄さんにお礼を言ってエレベータから出て、もう一回お礼を言っておこうと後ろを向いたらお兄さんが居ない。
その代わり両腕の無い人が一瞬見えた。ぱっと見、性別は分からなかったけど何となく女性っぽかった。
ぽかーんとしている内にドアは閉まったんだけど、素で「くぁwせ(ry」状態。
ガクブル((((((((;゚Д゚)))))))しながら弟に「今のなに」と聞いても、『なんかあったのー?(゚д゚)』みたいな顔。
後で聞いた話では、最初から最後まで誰も居なかったそうだ。お兄さんとの会話も弟には聞こえなかったらしい。
霊感なんて無いけど、怖い話やテレビ番組の『あなたの知らない世界』が好きだったから余計ガクブル。絶対に幽霊だと確信。
お見舞いが終わった両親に説明するものの「アンタの勘違いでしょ」と返される。それどころか売店よりも地下に行ったことをすげー怒られた(笑)。
※
翌週くらいにまた同じ人を見舞いに連れて来られた。
その時はたまたま看護婦さんが相手をしてくれた。その人に地下のことやエレベータのことを話したの。
そしたらさ、病院では時々そういう不思議なことがあるんだと教えてくれた。ただ話を合わせてくれただけかもしれないけど。
だけどこの病院には売店より下の階は無いなんて言うのさ。後から確かめに行ったらやはり無い。
だったら自分が見た部屋は何? 話した人は誰? 弟も見ていたし、今でも怖かったから覚えていると言うし。
十年以上前の話だけど、まだはっきりと覚えているんだよね。