一年くらい前に誰かがテレビで喋っていた話。
ある女の子が夢を見ていた。
夢の中で女の子は家の階段を登っている。
すると誰かに足を掴まれた。
振り向くと皺くちゃの顔した老人が物凄い形相で
「あああって!あああって!」
と、訳の分からない事を喚いている。
女の子はそこで目が覚めた。
気持ち悪い夢だなと思いながら台所に行くと、母親が喪服姿で慌ただしく朝食の準備をしている。
「ほら、あんたも早く準備しなさい!」
どうやら親戚の通夜に行くらしい。
軽く朝食をとって通夜に行くと、線香をあげるよう母に言われた。
座敷に行き、遺影を見た瞬間驚愕した。
なんと夢に出てきた老人だったのである。
そのことを親戚の人たちに話すと、
「○○ちゃんは覚えてないだろうけど、あのおじいちゃんにバレエシューズ買って貰ったり可愛がられてたのよ」
「ちょっと遊びに行ったのかもね」
という事を言われた。
そう言えばずっと前にバレエを少しやっていた記憶がある。
ひょっとしたら、
「おどって!おどって!」
と言っていたのかも。
※
その日の夜、また同じ様な夢を見た。
同じように足を掴まれ、
「あああって!あああって!」
と喚いている。
女の子は、
「ごめんねおじいちゃん…、私もうバレエやってないの。本当にごめんなさい…」
と言って、冥福を心から願った。
しかし、その老人はまったく聞く耳持たずに
「あああって!あああって!」
と喚き続けている。
女の子は困惑しながらも、老人の言葉を聞き取ろうと試みた。
「あああって!」
「ああわって!」
「かわって」