不思議な体験や洒落にならない怖い話まとめ – ミステリー

テレアポのバイト

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ちょっと前にテレアポのバイトをしていた時なんだけど。

インカム着けて通話しつつも、お互いの内容がなんとなく聞こえるくらい小さな事務所だった。

そこでバイト仲間の一人が妙なことになったんだよね。

俺は壁際で、隣はA(学生・男)って真面目な奴しかいないんで、その会話を聞き流しつつ『めんどくせー』とか思いながら、俺もリストに従って順番にノルマやっつけようとしてた。

インカムで塞がれてない左耳に

「はい…7月の…18日ですね…渋谷。はい、確実に」

ってAの声が聞こえてきて『アポ順調だなー、いいなー』なんて思ってたんだけど、その後、

「息が止まるまで何度も、何度も、刺す…はい…死ぬまで…逃がさない」

と聞こえてきた。

そして、急にAが後ろ向きに椅子ごとぶっ倒れたんだよね。

反射的に見たら白目剥いて泡吹いてて、女子も多い事務所だからパニック状態になっちゃって。

すぐに社員が救急車呼んで、Aは近所の病院へ運ばれたらしいけど、その後出勤してくることはなし。

テレアポで営業かけてたのは某CSのチューナーだし、刺すだの死ぬだの物騒なキーワードが出てくるのは常識的にあり得ない。

Aはどんなお客さんとどんな会話してるんだよ、と。

通話記録も残ってるはずだと思うんだけど、バイト先からは何の説明らしきものはなかった。

それから暫くして、飲み会の帰りの始発電車の中で偶然Aを見かけたんだよね。

Aはガラガラの車内の真ん中で突っ立ったまま、涎を垂れ流しながら恍惚の表情で笑っていて、見るに堪えなかった。

あの電話一本で何があったんだろう。

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